税金雑学

相続税の試算・シミュレーション業務について


最近、私たち税理士だけでなく、金融機関やハウスメーカーなども相続税の試算サービスを当り前の様に行うようになりました。不動産や金融資産をお持ちの方のところには、既にその様なサービスの案内が何度か届いたことがあるのではないでしょうか?
今回は、平成27年から実施される相続税の増税改正に伴い、私たちのところに質問が寄せられる回数が急増した、この「相続税の試算・シュミレーション」というサービスについて、ご案内したいと思います。

税理士が作成するものとの違い

大手金融機関などでは相続税の試算ソフト(プログラム)を導入しており、基本データを入力するだけで相続税が計算され、立派な報告書が作成される仕組となっております。
私たちのところにも、「銀行さんでこんな提案書を貰ったけど、どう思いますか?」といった相談が多数寄せられますので、相続税の計算書や相続対策の提案書を拝見する機会も多いのですが、担当者レベルでは相続税法に関する深い知識を有しているケースは少なく、報告書には必ずといっていいほどこう書いております。

①この報告書は税務申告に使用する為ではなく、仮定条件に基づく概算額の試算やそれに基づく情報提供を目的として作成しております。

②実際の申告や各種資産の取得または譲渡等、プラン実行の際には、税理士等の専門家に必ずご相談下さい。

③私どもは、相続税の試算サービスの他、お客様のご期待に沿うべく、様々な提案をさせて頂きたく存じますので、ぜひご活用下さい。

この部分は注意書きの様なもので、読み飛ばしている方が殆どだと思いますが、どうしてこの様な記載をしているのか、こっそり事情をご紹介させて頂きます。

税理士にしかできない業務(仕事)があります

私たち税理士に関するルールを定めた「税理士法という法律の第52条に、この様な定めがあります。(内容は要約しております。)

「税理士でない者は、税理士業務を行ってはならない。」

税理士業務というのは、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」のことで、税理士の資格を持たない人は、他人から頼まれて、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」を行ってはいけないということが定められている訳です。
少し分かり辛いので事例でご説明したいと思います。

事例1:
税理士ではないAさんが、個人事業をしている友人Bさんに頼まれて、確定申告書を代わりに作ってあげました。ちなみにAさんは、その御礼としてBさんに夕食を奢ってもらいました。

実はこの行為は税理士法違反になってしまい、Aさんは罰せられてしまいます。
ちなみに、御礼や報酬を貰っているか否かに関係なく、税理士法違反になりますのでご注意下さい。
(お医者さんじゃない人が、無料だからといって医療行為を行ってはいけないのと同じ考え方ですね。)

事例2:
株式会社M.Nオートの経理部に所属するMさんは、経理部長であるN氏から指示をうけて、自社の法人税の確定申告書を作成し、税務署に提出しました。

これは税理士法違反にはなりません。
事例1との大きな違いは、他人から頼まれて、他人の変わりに税理士業務を行った訳ではなく、あくまでも自分(自社)に係る申告書を作成・提出したにすぎないという点です。

税理士法違反にならないように

話を「どうして金融機関やハウスメーカーが作成する相続税の計算書や相続対策の提案書には注意書きコメントが記載されているのか?」という論点に戻しますが、その答えは「金融機関やハウスメーカーは税理士ではないからです。
前述のとおり、税理士でない金融機関やハウスメーカーは他人から頼まれて個別具体的な税金計算や税務相談を受けると違法になってしまうので、「あくまでも私たちは仮定条件の基で概算計算しているだけで、詳しくは税理士さんに聞いて下さいね、計算結果や提案内容に対しては責任を持ちませんよ」といった内容の注意書きコメントを付記するのです。

誰に相続税の試算・シミュレーションを依頼しますか?

皆様が、相続税の試算やシミュレーションを頼みたいと思ったとき、選択肢としては大きく分けて3つございます。

選択肢1:
金融機関やハウスメーカーに無料でお願いする

メリットはやはり無料である点です。
しかし、前述のとおり当たり障りのない内容しか計算・提案できなかったり、金融機関であれば金融資産を活用した相続対策の提案を、ハウスメーカーであれば不動産を活用した相続対策をそれぞれ提案しますので、様々な相続対策の比較検討ができないといったデメリットもあります。

選択肢2:
税理士事務所(会計事務所)の中でも、無料で行っている事務所を探してお願いする

こちらのメリットもやはり無料である点に加えて、少なくとも金融機関やハウスメーカーの担当者レベルよりは税務の知識に詳しいスタッフが計算・提案するケースが多いので、より詳細な試算結果や提案内容を得ることが可能となる点です。
しかし、私たち税理士も慈善事業ではなく、当然に利益を得る為に日々業務に取り組んでおりますので、無料の業務に手間隙を掛ける訳にはいきません。
実際に無料でサービスを提供している税理士事務所(会計事務所)は、手間暇をかけずに非常にシステマチックに計算・提案を行っています。
具体的には、税務の知識を有さないアシスタントスタッフが基本情報を税務ソフトやエクセルで作成したプログラムに入力して、担当者が簡単にチェックするといった方法です。

選択肢3:
有料でも良いので、信頼できる税理士にお願いする

これまでの2つの選択肢との最大の違いは「有料」である点です。
しかし、お客様から報酬を頂く以上は、お客様の財産状況やライフプランなども考慮し、詳細な検討を繰り返しながら業務に取り組みます。また、税理士の資格を有さないスタッフではなく、税理士本人が実際に手を動かし、頭をフル稼働させることが殆どです。
(私たちの事務所でも、最初から最後まで税理士本人が責任を持って担当します。)
逆に、税理士本人がこの様な姿勢で手間隙をかけて相続税の試算や相続対策の提案を行う以上、無料で行ってしまうと税理士事務所(会計事務所)の経営自体が赤字となってしまいます…。

最後に

こんな質問を受けることがあります。

「有料と無料の違いはなんですか?」

私たちはこう答えます。

「計算結果や提案書に心がこもっているか否かの違いです。」

不適切な表現なのかもしれませんが、私たちはお客様の負担にならない必要最小限の報酬で、お客様のことを第一に考え、心のこもったサービスを提供することをお約束します。


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