今回は数ある節税対策の中から、中古車販売店、バイクショップ、板金・整備工場の方に特にオススメしたい経営セーフティ共済(以下、「倒産防止共済」という。)の活用について、注意すべきポイントを含めてご紹介したいと思います。
倒産防止共済とは?
倒産防止共済は、取引先の予期せぬ倒産による「連鎖倒産から中小企業を守る制度」で、取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、共済金の貸付けを受けることができます。
もちろん制度そのものも素晴らしいのですが、この倒産防止共済には「節税対策」の観点からも非常に魅力的であるといえます。
掛金は全額損金算入
倒産防止共済の掛金は、月額5,000円~20万円(5,000円単位)の範囲で自由に選択することができ、掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができます。
そして特筆すべきは、掛金の税法上の取扱いです。
この倒産防止共済の掛金は、個人であれば必要経費に、法人であれば損金の額にそれぞれ算入されます。
つまり、積立金としての要素がありながら、経費性が100%という訳です。
掛金の金額変更も可能
倒産防止共済の掛金は、途中で変更することができますので、〝払えなくなったら困るから…〟と加入を躊躇する必要はありません。
当初設定した金額を払い続けることが困難になった場合には、最低掛金である月額5,000円に変更すれば良いのです。
3年と4ヶ月で返戻率100%
倒産防止共済を解約すれば解約手当金を受取ることができるのですが、加入期間が「40か月以上」の場合には、返戻率が100%となります。
生命保険を活用した節税対策の場合には、これだけの短期間で返戻率100%を実現することは不可能なので、「保障」を考慮外とした場合には、この倒産防止共済を生命保険より優先的に活用すべきケースも多いと言えます。
解約時期を工夫して節税対策
倒産防止共済を解約した場合の解約手当金は、税法上、個人であれば事業所得の収入金額に、法人であれば益金の額にそれぞれ算入されます。
つまり、何も考えずに解約してしまうと、これまで掛金が100%経費扱いになることによって節税できていた分が、解約手当金に対する課税によってチャラになってしまうどころか、一時的に課税されることによって、高い税率が適用され、節税できていた分以上に税金を納める必要が生じてしまいます。
まさに「プラマイゼロ!むしろマーイ!」となってしまう訳ですね。
そこで工夫すべきは解約タイミングの出口戦略です。
工場の修繕、役員の退職金または自然災害による損失発生など、解約手当金の「益」と相殺可能な「損」が発生するタイミングで倒産防止共済を解約するのです。
また、「損」が発生する局面では、資金的にも苦しくなってしまうことが多いので、資金面からも解約手当金は有用な存在となるでしょう。
掛金の前納(年払)による節税
自動車・バイク業界の場合、年度の初めから儲かることが分かっているケースは殆どありません。
実務上は、決算期や年末間近になって予想以上に利益が出ていることが判明し、慌てて節税対策を考えるケースが圧倒的に多いでしょう。
しかし、倒産防止共済の掛金は、原則として月払いであるため、決算期や年末間近になってから節税対策をしたとしても、1ヶ月分の掛金しか経費にすることができません。
そんなときに活用して頂きたいのは、「前納」という制度です。
前納制度の概要(限度額)
倒産防止共済の掛金は、積立限度額(800万円)の範囲内であれば、「前払い」で納めることができます。
よって、加入申込時に掛金月額を10万円に設定した場合には最大79ヶ月分まで、20万円に設定した場合は39ヶ月分まで前納することができるのです。
(掛金を納付する月は前納期間には含まれません。)。
前納掛金の税務上の取扱い
通常、前納した保険料や掛金などは、原則として「前払費用」として処理されるため、その年度の対応月分しか経費にはなりません。
しかし、倒産防止共済の掛金は「〝前納の期間が1年以内であるものを除き〟支払った日の属する年分または事業年度において必要経費または損金に算入することができる掛金ではない!」と規定されています。
何だか分かりづらい表現ですが、言い換えれば「前納の期間が1年以内である場合には、支払ったときに経費になる!」ということですね。
つまり、節税対策として倒産防止共済を活用する場合は、年末または決算月に1年分を年払いするのがベターであるといえます。
注意!!翌年以降は、勝手に月払に戻ります
倒産防止共済の掛金支払方法は、一旦「前納」を採用したとしても、翌年には自動的に「月払い」に戻ってしまいますので、前納を継続して行う場合には、『前納申出書』(様式 中 214)』を再び提出する必要があります。
なお申請期限は、払込みを希望する月の5日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)までに中小機構が受理できこととなっておりますので、余裕をもって登録取扱機関に提出するようにしましょう。
前納による減額金
倒産防止共済の掛金を前納すると、一定の減額率により計算された減額金を受取ることができます。
実はこの減額金の減額率は「0.5%」と昨今の低金利時代では非常に魅力的な数字でした。
しかし、残念なことに減額率の見直しが行われ、平成29年11月からは「0.09%」となってしまいます。
以上、制度の概要と節税対策の仕組みについてご説明させて頂きましたが、節税対策はこの倒産防止共済だけでなく、自店にあったものを組み合わせることで最大の効果を発揮します。
弊所までご相談頂ければ、「税理士協同組合」経由で一部の手続きを省略して倒産防止共済に加入することができますし、節税対策のトータルアドバイスも行っております。
想定を上回る利益が出たとお悩みの方、税負担が重くなってきたと感じている方は、ぜひ気軽にお問い合わせ下さい。