今回は、最近よくお問合せをいただく「身体障害者用の自動車に係る消費税」についてご紹介したいと思います。
消費税が非課税となる取引
我が国では、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引を消費税の課税対象としていますが、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや、社会政策的配慮から課税しないこととされている「非課税取引」が定められています。
この非課税取引は、17項目の限定列挙となっていて、その中の1つに次のような項目があります。
(14)一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
義肢、盲人用安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車いす、改造自動車などの身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負及びこれら身体障害者用物品の修理のうち一定のもの
この内容から自動車業界に関連する部分だけを要約してみますと…
①身体障害者用自動車の譲渡
②身体障害者用自動車の貸付け
③身体障害者用自動車の製作の請負
④身体障害者用自動車の修理
となります。
身体障害者用物品に該当する自動車
消費税が非課税となる身体障害者用の自動車とは、どのような自動車をいうのでしょうか?
具体的には、「身体障害者の使用に供するものとして特殊な性状、構造又は機能を有するもの」とされていて、大きく分けると次の2つが該当します。
1.自操車
まず1つ目は、「身体障害者による運転に支障がないよう、道路交通法第91条《免許の条件》の規定(注)により付される運転免許の条件の趣旨に従い、その身体障害者の身体の状態に応じて、手動装置、左足用アクセル、足踏式方向指示器、右駐車ブレーキレバー、足動装置、運転用改造座席の補助手段が講じられている自動車」です。
(注)免道路交通法第91条《免許の条件》
公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要があると認めるときは、必要な限度において、免許に、その免許に係る者の身体の状態又は運転の技能に応じ、その者が運転することができる自動車等の種類を限定し、その他自動車等を運転するについて必要な条件を付し、及びこれを変更することができる。
身体障害者の方が補助手段(アシスト装置)を車に付けてご自身で運転する車両のこと を「自操車(じそうしゃ)」といいますが、この自操車は身体障害者用物品として非課税の対象となります。
2.介護車
2つ目は、「車いす及び電動車いす(以下「車いす等」という。)を使用する者を車いす等とともに搬送できるよう、車いす等昇降装置を装備し、かつ、車いす等の固定等に必要な手段を施した自動車」です。
これは、いわゆる「介護車」と呼ばれる自動車で、身体障害者の方ご自身が運転するものではありませんが、この介護車も身体障害者用物品とて非課税の対象となります。
身体障害者の方が購入する車両が「非課税」になると勘違いされているケースが多いようですが、あくまでも身体障害者用の自動車に該当するものの譲渡や貸付けなどが「非課税」になると規定されていますので、注意が必要です。
非課税となる行為
次に、対象となった自動車に関するどのような行為が「非課税」となるのか、確認したいと思います。
身体障害者用の自動車に該当したからといって、その自動車に係る全ての行為が「非課税」の対象となる訳ではありません。
対象となる行為のうち、①譲渡、②貸付け、③製作の請負の3つについては、特に難しいことはないと思いますが、④修理については、次の2つだけが「非課税」の対象となりますので注意が必要です。
1.自操車の補助手段(注)に係る修理
(注)手動装置、左足用アクセル、足踏式方向指示器、右駐車ブレーキレバー、足動装置、運転用改造座席
2.介護車の車いす等昇降装置及び必要な手段に係る修理
つまり、修理の場合は自操車や介護車に該当するからといって、一般的な整備や修理は「非課税」の対象にはならないということです。
ちなみに、①譲渡(販売)であっても、自動車の登録費用なども「非課税」の対象とはなりません。
その他の注意点
いかがでしたでしょうか?
この身体障害者用の自動車に関する論点は、とても判断に迷うことが多いと思います。
判断に迷うときは、ご自身だけで判断せず、福祉車両を扱うメーカーや顧問税理士に問い合わせのうえ、正しい処理を行うようにして下さい。
もちろん、私たちOFFICE M.N GARAGEへのお問い合わせも大歓迎ですよ♪
最後に、判断に迷う項目について3つほど解説しておきます。
1.身体障害者用自動車への改造
委託を受けて一般自動車を非課税の対象となる身体障害者用自動車に改造する行為は、③制作の請負に該当しますので、非課税となります。
2.一般自動車の購入代金
身体障害者用自動車に改造をした自動車の譲渡代金は非課税となりますが、いったん一般自動車を購入し、その後改造を行う場合には、当初の一般自動車の購入は課税となります。
3.補助手段の装置の譲渡
補助手段の装置自体の譲渡は、非課税とはなりません。
質問です。
私は障害手帳1級を所有している車いすユーザーです。
2.一般自動車の購入代金について質問です。
「一般自動車を購入し、その後改造を行う場合には、当初の一般自動車の購入は課税となります」とあるのですが…
現在、ある車屋(一般ディーラーでは無くキャンピングカーなどの業者)で新車で車両を注文していて車両の消費税非課税について相談したところ、車両の登録は既にしてしまったので非課税になるのは手動装置の値段だけと言われました。
私としては新車を購入して納車前に手動装置を取り付けるので車両代金も非課税になると思っていたのですが、業者がディーラーから仕入れる際に課税で購入したのでエンドユーザーである私も車両代は課税!ということになるんでしょうか?
なお、購入の時点で手動装置取り付けについては説明してたので当初より福祉車両として登録される事は業者も承知していたはずです。
お忙しいでしょうが、回答よろしくお願いいたします。
本村さま
コメント有難うございます。
ご質問の件、お話をお伺いする限りでは、非ディーラーにて「新車の購入」と「納車前の手動装置取付」をオーダーされているので、販売店さんの仰るとおりかと考えます。
ただし、購入時に販売店さんとの間で、どのようなやり取りがあり、どのような注文書を締結したかにもよりますので、ご納得がいかない部分がある場合には、販売店さんと良く話し合ってみて下さい。
宜しくお願いします。
酒井
酒井さん
ご丁寧にお返事ありがとうございます。
非ディーラーで車を買う際は消費税免除は無いということですか?
ネットで色々と調べると中古車で購入する際も消費税免除があるとか、キャンピングカーショップで300万の車両を福祉車両に改造した際は消費税免除で300万での販売になる等のコメントをみたのですが…。
正規ディーラーでないと消費税免除がないなんておかしな法律ですね?
酒井さんにボヤいても仕方ないですが、残念です。
本村さま
こんばんは。
当方の説明不足で申し訳ございませんが、「正規ディーラーでないと消費税非課税にならない」ということではありません。
私が外から口出しすべきような話ではありませんが、「自動車を買って、手動装置の取り付けを頼んだ」のか「手動装置付の自動車を買ったのか」の認識の違いなのかな…?と思います。
この辺りは、ご本人さんと販売店さんで話し合って頂くのが一番だと思います。
酒井