中古車販売業の方には、口をすっぱくして何度も申し上げているのですが、中古車販売店（中古車屋さん）を経営する事業者に税務調査が入った際に一番の争点となるポイントは、在庫（棚卸資産）の管理状況です。
これは、売上原価の計算が在庫（棚卸資産）の金額に直結しており、利益操作に悪用されてしまう可能性がある為で、税務署も厳しく目を光らせているのです。
＜売上原価の計算＞
期首棚卸（在庫）高 ＋ 当期仕入高 － 期末棚卸（在庫）高
そこで今回は、この棚卸資産に着目し、「中古車販売業における在庫車両（棚卸資産）の評価損」について、法人経営者のケースを前提にご紹介したいと思います。
売れる見込みがない車
お店としては望ましい状況ではございませんが、もう売れる見込みがない車を在庫として保有している場合、出来ればこの車は費用として計上したいところですよね。しかし、税務上は、何でもかんでも費用として計上できる訳ではなく、「費用（評価損）として計上できるのはどんな場合か」について規定しています。
費用（評価損）が計上できる場合
在庫車両が災害によって著しく損傷し、または著しく陳腐化したことにより、在庫車両の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合に、費用（評価損）を計上して良いこととされております。
「災害によって著しく損傷」は何となくイメージして頂けるかと思います。あまり考えたくないですが、雹（ひょう）による被害や、竜巻による被害により、在庫車両がダメージを受けた場合を指します。
では、「著しく陳腐化」とはどのようなケースを指すのでしょうか？
税務上の表現では、「在庫車両そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあること」となります。
ますます訳が分からないので、いくつか例示があります。
(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。
(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。
「あーなるほど、真冬のオープンカーと、モデルチェンジによる型落ちですね！」
と解釈されそうですが、オープンカーは春先になればまた売れ行きが上がってきますし、中古車市場では新型モデル車両の発売が旧型モデルの価額に著しくは影響しないことが殆どです。
よって、中古車販売業においては、「災害による損傷」があった場合のみ、費用（評価損）が計上出来ると考えた方が良いと思います。この評価損の規定を拡大解釈して、税務調査で痛い目にあった方もいらっしゃますので、評価損の計上を検討される際には、必ず専門家に相談することを推奨します。
（例外もございますので、判断に迷われていることがございましたら、個別にご連絡下さい。）
ちなみに、「単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、費用（評価損）の計上はできない」とも規定されておりますので、在庫車両（棚卸資産）について費用（評価損）を計上することが、税務上はいかに厳しく取り扱われるか、ご理解頂けるのではないでしょうか？
以上、今回は在庫車両（棚卸資産）の評価損の計上についてご照会いたしました。
次回は、同じく在庫車両（棚卸資産）に着目し、その評価方法についてご紹介したいと思います。
