自動車の板金塗装と簡易課税の事業区分…。
第３種事業なのか、第５種事業なのか…。
この「自動車板金塗装業と消費税における簡易課税の事業区分」については、自動車整備工場さんや板金塗装業者さんだけでなく、税理士や会計事務所担当者の方も、色々とネットで調べたりされている方が多いようですが、どの税理士事務所のホームページにも明確な答えが書かれていませんよね。
恐らくそれは、誰も明確な答えが分からないからだと思います。
もちろん私たちは明確な答えを持っていますので、税務顧問を担当させて頂いている事業者さんや、直接お問い合わせ頂いた方々には、その答えをご案内してきました。
そこで今回は、この「自動車板金塗装業と消費税における簡易課税の事業区分」に関する考え方をご紹介したいと思います。
あくまでも、私たちが様々な規定や情報を根拠として導き出した内容となりますので、どの様に解釈されるかは、読んだ方の判断にお任せしますが、ぜひ参考にしてみて下さい。
日本標準産業分類からみた事業区分
簡易課税の事業区分は、おおむね日本標準産業分類を基礎として判定することとされていますが、国税庁のホームページには、次のような記載がされている頁があります。
大分類：建設業
中分類：職別工事業（設備工事業を除く）
小分類：板金･金物工事業→ おおむね第三種事業
大分類：建設業
中分類：職別工事業（設備工事業を除く）
小分類：塗装工事業→ おおむね第三種事業
これを見て、自動車の板金塗装業も第３種事業と考えて良いのでしょうか？
建設業における板金と自動車業における板金
全日本板金工業組合連合会のホームページには、建築板金の定義が書かれています。
一般に板金と呼ばれる金属板を利用することにより事業を営んでいる板金業には、大別して、建築板金と工場板金とがあります。
前者（＝建築板金）は、おもに薄い金属板（薄もの）を使って、これを切断したり、折ったり、貼り合わせたり、変形させたり―すなわち加工することにより、屋根・外壁・雨といをはじめ、厨房用金物・ダクト・天蓋・排気筒、あるいは内壁・工芸品など、主として建築板金製品を製造し、これを建築物の所定個所に取り付ける工事までおこなう業態のものをいいます。
う～ん、何だか自動車業における板金とは、少しニュアンスが違いますね。
これに対し、後者（工場板金）は、おもに厚い金属板（厚もの）を使って、原理的には前者と同様な加工過程を踏むことにより、自動車とか飛行機のボデー、あるいは諸装置を納めるためのキュービクルなどの板金製品を製造し、目的とする生産が主として工場内で完了する業態のものをいいます。
おっ、「自動車のボデー」というキーワードが出ましたね！
やっぱり、第３種事業と考えて大丈夫でしょうか！？
自動車板金塗装の簡易課税をめぐる裁決事例
ここで１つ、国税不服審判所における裁決事例をご紹介したいと思います。
請求人は、自動車板金塗装等により車両の価値は増加しており、その増加した価値を製造しているのであるから自動車板金塗装等は製造業に該当し、簡易課税制度の適用上、第三種事業又は第四種事業を適用すべき旨主張する。しかしながら、自動車板金塗装等は、車両本体に板金塗装を施すことであってその本質は「つくろい直す、造り直す及び交換等をする」というサービスの提供にあると認められることからサービス業に該当し、簡易課税制度の適用上、第五種事業を適用した原処分は適法である。
（平13．6．28熊裁（諸）平12－34）
何だか堅苦しい表現がされていますが、このケースでは、自動車業における板金塗装は、「製造業」ではなく、修理としての「サービス業」なので、第５種事業として処理するのが適切だとされています。
結論
これまでの解説を総合的に考えますと、結論は明らかです。
通常の自動車板金塗装は、
第５種事業
です。
「通常の」という表現を強調したのは、カロッツェリア（自動車のボディをデザイン・製造する業者）や伝統板金（１枚の鉄板から自動車のボディを叩き出すような特殊板金）を除くという意味合いからです。
形あるものを修理するのではなく、原材料から製品を造り上げるこれらの板金は、製造業として扱うことが妥当だと考えますので、第３種事業を選択することになります。
同じ「自動車の板金塗装」であっても、様々なケースが想定されますので、基本的には個別判定を行う必要があることを、最後に補足させて頂きます。
以上、ご不明な点などございましたら、気軽にお問い合わせ下さい。
