実はこの「残債のある車両を下取りした場合の経理処理」という論点は、来る7月29日(金)に発売される実務書『いまさら人に聞けない「中古車販売業」の経営・会計・税務』のなかでご紹介したかったのですが、頁数との兼ね合いや、基本的な(応用的でない)内容を中心とした構成であったため、掲載を見送りました。
しかし、この内容は、全国の中古車販売店や自動車整備工場の経理業務に従事されている皆さまにぜひ知っておいて頂きたい経理テクニックでございますので、出し惜しみせずに、ここでご紹介したいと思います。
下取り価格より残債が少ない場合
下取り車の残債を経理処理する際には、その下取りに伴う車両販売に係る「売掛金」として処理することがポイントです。
ホントかよ?
と思われた方もいらっしゃるかと思いますので、お金の流れに従って、実際に仕訳処理してみましょう。
設例1:残債のある車両の下取り(下取り価格>残債)
・車両販売代金 100万円(諸費用等を含む)
・下取り車価格 50万円
・下取り車残債 30万円
※お客様からは、100 -(50-30)=80を振り込んで頂く。
売買成立(注文書を締結)
・売掛金 100 / 売 上100
・仕 入 50 / 売掛金 50
※この段階では、残債の処理は無し
※売掛金残高 50
お客様から入金
・預 金 80 / 売掛金 80
※売掛金残高 ▲30
※この段階では、一旦売掛金がマイナスになる。
信販会社に残債を支払う
・売掛金 30 / 預 金 30
※ここがポイント!売掛金で処理
※売掛金残高 0
結論
ご覧頂いたように、売掛金という勘定科目1本で処理することにより、最終的にきれいに売掛金残高が0(ゼロ)になりました。
お金の入出金のタイミングに拘りすぎて、未収入金や立替金、預り金といった勘定科目を使ってしまうと、処理が煩雑になるばかりか、検証性が著しく低下する結果となるので、オススメできません。
下取り価格より残債が多い場合
念のため、下取り価格より残債の方が多いケースも確認しておきましょう。
設例2:残債のある車両の下取り(下取り価格<残債)
・車両販売代金 100万円(諸費用等を含む)
・下取り車価格 50万円
・下取り車残債 60万円
※お客様からは、100 -(50-60)=110を振り込んで頂く。
売買成立(注文書を締結)
・売掛金 100 / 売 上100
・仕 入 50 / 売掛金 50
※この段階では、残債の処理は無し
※売掛金残高 50
お客様から入金
・預 金 110 / 売掛金 110
※売掛金残高 ▲60
※この段階では、一旦売掛金がマイナスになる。
信販会社に残債を支払う
・売掛金 60 / 預 金 60
※ここがポイント!売掛金で処理
※売掛金残高 0
結論
やはり、最終的にきれいに売掛金残高が0(ゼロ)になりました。
つまり、下取り車と残債の大小に関わらず、残債のある車両を下取りした場合の経理処理は、売掛金1本で処理する方法が良いということです。
いかがでしたでしょうか?
少し分かり辛かったなぁ…と感じた方は、遠慮なく個別にお問い合わせ頂ければ、より丁寧にご説明申し上げます。