あぁ、もうすぐ決算だ…。
と憂鬱になっている、経営者の皆さま！
皆さまが思っている程、「決算」は大変ではありませんよ。
日々の経理業務を、そして月次決算業務をきっちりと行っていれば、「決算」はとても楽な作業となります。
そこで今回は、意外と何をして良いのか知られていない、「車屋さんの月次決算」について、ご紹介したいと思います。
そもそも月次決算って何ですか？
月次決算とは、事業年度末に行う税法や会社法などの法律に基づいた決算とは別に、経営管理のために月々行われる決算のことです。
外部報告を目的とした決算とは異なり、主に内部利用目的のために行われる決算であるため、どのような月次決算処理をするかの決まりがある訳ではありません。
業績管理が主たる目的となりますので、概算計上などの処理方法も取り入れながら業務効率化を優先することも重要となります。
月次決算を行う目的と附随メリット
月次決算を行う目的は、最新の経営状態をタイムリーに把握し、経営判断に役立てることに他なりません。これは、会社の資金繰り計画を立てる際にも役立ち、この資金繰りの安定が、後々の経営状態の安定に繋がります。
また、実務上においては、この他にも月次決算を行うことで、以下のようなメリットが生じます。
あくまでも附随的なものですが、業務全体の効率化という観点からも、月次決算資料は大変有用なものであるといえます 。
決算が楽になる
年次決算の前倒し効果があり、年次決算業務の効率化を図ることができます。
経営に役立つ
経営目標の達成率のなどを随時把握するための資料とすることができます。
節税しやすくなる
決算の着地見込を把握することができ、節税等の対策を早期に行うことができます。
車屋さんの月次決算処理
月次決算について簡単にご説明したところで、具体的な月次決算における３つのポイントをご紹介します。
月次棚卸計上の方法
まず始めに行うのは、月次棚卸の計上です。
簿記の勉強をされたことがある方にとっては御馴染の「仕入・繰商」「繰商・仕入」の処理を行って、月次ベースでの売上原価を計算します。
【事業年度の１ヶ月目の月次棚卸仕訳】
これは、簿記の授業で習う一般的な仕訳処理なので、特に注意すべきポイントはありません。
【事業年度の２ヶ月目以降の月次棚卸仕訳】
ここでは、前月末残高を戻し入れる１行目の仕訳処理に注目して下さい。
先ほどの「期首棚卸高」ではなく「期末棚卸高」の勘定を使用していることがご確認頂けると思います。
実は、ここがポイントです。
事業年度の２ヶ月目以降の月次棚卸仕訳で「期首棚卸高」の勘定を使用してしまうと、損益は正しく計算することができるのですが、年間の残高試算表や損益計算書において「期首棚卸高」や「期末棚卸高」が累計で集計されてしまい、正しく表示されないのです。
預り金・立替金勘定の精査
中古車販売業や自動車整備業などの実務処理では、自動車税や自賠責保険料など数多くの種類の預り金勘定を使用します。そしてこれらの勘定は、計上と取り崩しが繰り返される特徴があり、１年分を決算時にまとめてチェックすることは大変な作業です。
そこで、これらの取り崩しが正しく行われているか否かの精査を月単位で行うことがポイントとなります。
減価償却費概算計上の方法
減価償却費というのは、支出を伴わない費用となりますので、日々の記帳業務には含まれません。
本来は、1年分まとめて期末に計上すれば足りる減価償却の処理ですが、構築物や機械装置の減価償却費が大きくなることの多い中古車販売業や自動車整備業などにおいては、適正な経営判断のために、この減価償却費も月次単位で概算計上することがポイントとなります。
金額は概算で構いませんので、月次決算処理の段階では、資産勘定から直接減額せずに、「減価償却累計額」という科目で処理しておいて、年次決算時に12ヶ月間計上してきた「減価償却累計額」を一度戻し入れて、本来計上すべき減価償却費を資産勘定から直接減額する形で計上すると良いでしょう。
