税金雑学

税理士が教える税理士(会計事務所)の選び方


開業や会社設立を検討されている方や税理士の変更を検討されている方にとって、税理士(会計事務所)選びは一大イベントです。
私たち税理士自身にとってみれば、「良い税理士」「悪い税理士」は直ぐに見分けがつきますが、お客様の立場では、税理士を見分けることが非常に難しく、皆様ご苦労されていることと思います。
そこで、今回は税理士としての立場から、「税理士(会計事務所)の選び方」について記載します。
本当は表だって言い辛い裏事情など、一部不適切な表現が含まれているかもしれませんが、「税金雑学」のブログ内ということで、ご了承下さい。

税理士(会計事務所)って本当に必要?

色々な考え方があると思いますが、私たちは、「経営者は本業(事業経営)に全力を注ぐべきであって、その環境作りの為には、税理士の存在は必要不可欠である」と考えています。
また、「良い税理士」というのは、単に経営者の負担を軽減するだけでなく、経営者の力強い味方となり、事業経営において重要な存在となります。
よって、事業経営の成長・発展のためには「良い税理士」の起用が必要不可欠であるとお考え下さい。

税理士(会計事務所)ってどうやって探せばいいの?

税理士(会計事務所)の探し方は、次の3通りに大別されますが、それぞれについて「メリット」と「デメリット」、さらには「注意すべきポイント」をご紹介致します。
結論を先に申し上げますが、私たちとしては、「②取引先や知人からの紹介を受ける」「③自分でインターネット等を利用して検索する」を状況に応じて旨く組み合わせて税理士(会計事務所)を探すことを強く推奨します。とにかく報酬が安い税理士(会計事務所)が良い!!という方以外は「①税理士紹介会社(税理士紹介サイト)を利用する」は避けたほうが得策です。

①税理士紹介会社(税理士紹介サイト)を利用する

私たちのところにも税理士紹介会社から「提携しませんか?」と毎日のように連絡がありますが、「紹介料として年間顧問料の50%を先払いで頂戴します」といった内容が殆どで、これがまさに税理士紹介会社(税理士紹介サイト)のビジネスモデルなのです。
お気づきかと思いますが、このようなビジネスモデルは、お客様にとっても、私たち税理士にとってもメリットがないため、私たちは税理士紹介会社(税理士紹介サイト)とは一切提携しておりません
冷静に考えますと、私たち税理士が紹介会社へ支払う紹介料は、お客様から頂く顧問報酬から捻出する訳ですから、このような紹介料を支払うことは、私たち税理士にとってみれば、実質的には税理士報酬の値引きと同様の効果になります。そして、その値引き額は、お客様に還元できずに、紹介料として紹介会社の手に渡る仕組みとなる訳です。
例えば、紹介会社に支払う紹介料が年間顧問料の50%だったとしますと、 適正な顧問料の50%offの金額で、私たちはお客様にサービスを提供することとなる為、提供するサービスの「質」の低下は避けられませんし、悪質なケースでは、適正な顧問料に紹介料が上乗せされていて、お客様が紹介料を負担させられているかもしれません。 いずれにしても、紹介料相当額は、お客様にとってマイナスの要素でしかないのです。

<メリット>
・基本無料
・税理士の面談をアレンジしてもらえる
・手間をかけずに複数人の税理士紹介が受けられる

<デメリット>
・紹介会社の事情(成約率や紹介料が高い税理士優先)で紹介が行われるため、必ずしも良い税理士が紹介されるとは限らない
・登録している税理士の中からしか選べない
・税理士側が紹介料を紹介会社に支払うため、提供サービスが低下する

<注意すべきポイント>
・必ず複数名(5名程度)の税理士の紹介を受け面談し、得意分野や人柄をしっかりと確かめるよう心がけて下さい

②取引先や知人からの紹介を受ける

<メリット>
・得意分野、評判や人柄など、信憑性がある情報を入手できる
・取引先や知人も変な税理士は紹介しないはずなので、良い税理士である可能性が高い
・料金体系もある程度予想がつく

<デメリット>
・取引先や知人のことを考えると、値段交渉がしづらい
・紹介を受けてしまった手前、自分とは合わない税理士だったとしても断りづらい
・顧問契約を打ち切る際に取引先や知人などに気を遣う
・自分のビジネス(業種)にあっている税理士とは限らない

<注意すべきポイント>
・紹介者には何人かの税理士の中から決めることを遠まわしに伝えておきましょう
・取引上の立場が上の人(元請けや得意先など)からの紹介は、極力避けましょう

③自分でインターネット等を利用して検索する

<メリット>
・ホームページなどで、自分にあいそうな税理士を多く検討できる
・紹介者などのしがらみがないので、自分と合わなかった場合には断りやすい
・ITに強い税理士である可能性が高い

<デメリット>
・ホームページのデザインが綺麗だと良い税理士だと惑わされてしまう
・ホームページを作っていない有能な税理士と巡り合えない可能性が高い
・サイト情報に差がない場合は、料金だけの比較になり、質の検討が難しい
・結局、実際に直接会ってみないとわからない

<注意すべきポイント>
・ホームページは、営業ツールですので、決して記載内容だけで判断をしないでください
・ホームページを税理士自身が作っていて、日々更新されているホームページから選ぶ様にしてください

税理士にもいろいろなタイプがあるのです

ご存知ない方も多いかと思いますが、私たち税理士にも、税理士の資格を有することとなった経緯によって、4つのタイプがあるのです。

①国家試験合格者 (=「試験組」)

いわゆる「税理士試験に合格」して税理士になった人をいいます。
私たち(税理士 酒井将人、税理士 相川奈緒)も、これに該当します。
ちなみに税理士試験は、会計科目を2科目と税法科目を3科目(合計5科目)に合格する必要があります。

②税務署OB (=「税務署あがり」)

税務署の職員には一定期間以上勤務すると事実上無試験で税理士になれるという特典があり、この制度を利用して税理士になった人をいいます。
税務署の職員の多くは、この特典を利用し、定年退官した後に税理士の登録をして会計事務所を開業するのです。現在、日本全国で税理士登録をしている税理士のうち約半数がこの「税務署あがり」だといわれています。

③ダブルマスター(=「免除組」)

大学院の修士課程を2つ修了すると税理士試験の5科目全てが免除される制度を利用して税理士となった人をいいます。
これは1度も税理士試験を受けずに税理士になることができる制度であった為、「流石にそれはオカシイだろう」ということで、現在では全ての試験が免除されることはなく、最低でも、会計科目と税法科目それぞれ1科目ずつは税理士試験に合格しなければならなくなっております。

④公認会計士・弁護士 (=「無試験組」)

公認会計士と弁護士は、登録するだけで税理士になれます。(最近、税理士法が改正され登録に際しては研修受講が必要となりました。)
以前の記事「会計士と税理士の違い」にも記載しましたが、税理士と会計士とでは、担当する分野が全く異なっているにもかかわらず、現在の制度においては、公認会計士は税理士試験に合格する必要がなく税理士登録できてしまうのです。

どのタイプを選べばいいの?

税理士を登録した後の「実績」も当然重要なのですが、知識の基礎となった「経緯」も、税理士を評価する上で重要な情報となります。
それぞれの一般的な特徴を列挙しますと次のとおりです。
・「試験組」は、ベースとなる知識がしっかりしている
・「税務署あがり」は、税務署での勤務時に担当していた税法(税目)に強い
・「免除組」は、未知数としか言いようがない
・「無試験組」は、税金以外(会計または法務)の見識や知識が豊富である
もちろん、あくまでも一般的な特徴となりますので、この情報だけを元に「良い税理士」「悪い税理士」の判断をすべきではありません。 例えば、「税務署あがり」で退官後に担当以外の税法(税目)を勉強した人や、公認会計士で税法をよく勉強している人もいます。
つまり、「良い税理士」を選ぶには、税理士になった「経緯」を参考にしながら、「税理士になったあとも、お客様のニーズに応えるため努力を続けているか」という現在の業務に取り組む姿勢も含めて総合的に判断することがポイントとなる訳です。
税法は毎年改正され、また、お客様からの要求も多様化しています。よって、税理士となっただけでは知識経験ともに不十分であり、その後もしっかりと勉強と情報の更新を続けている税理士かどうかを見極めることが重要となります。

最後に

最後までお読み頂き、有難うございました。
色々と書いて参りましたが、最終的には、皆様がその税理士から受ける印象を大切にし、「自分(自分の会社)の為に行動してくれる税理士」「その為の知識と経験がある税理士」「親しみやすい(気軽に相談できる)税理士」を選んで頂きたいと思います。
次回は、晴れて「良い税理士」が見つかったあと、もう少し踏み込んで「契約をする際の注意点」「税理士とのお付き合いの仕方」についてもご紹介したいと思います。


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