今回ご登場頂きますのは、ブーランジェ(パン職人)の黒野清江(くろのきよえ)さんです。
黒野さんが作るパンに使用している「自然酵母(詳細は後述)」は、扱いが非常に繊細で、心を遣わないとすぐにへそを曲げてしまうそうです。私はこの話を聞いたとき、「まるでラテン車そのものだ!」と感じました。
そんな「自然酵母」に拘り、最高のパンを作る黒野さんに、ブーランジェ(パン職人)としてのお仕事のこと、そしてお仕事でも使用されている愛車のことをお聞きしたいと思います。
パンを運ぶ為の実用的な車種をイメージした方もいらっしゃると思いますが、想定外のクルマが登場しますので、お楽しみに!笑。
黒野 清江 × ブーランジェ
酒井:「黒野さん、この度は突然のお声掛けにも関わらず、インタビューに応じていただき有難うございます。失礼なことを聞いてしまうかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします。」
黒野さん:「こちらこそ宜しくお願いします。私の愛車をご紹介頂けるなんて、これまで受けた仕事(パン)の取材のときよりもテンションが上がっていますので、遠慮なさらず何でも聞いて下さい。」
酒井:「有難うございます。では早速お仕事のことからお聞きして…と言いたいところですが、まずは、私が勝手に思い浮かべるパン屋さんのクルマについてお話させて頂いても宜しいですか?」
黒野さん:「いいですよ。私も酒井さんがどんなイメージを持たれているか、興味がありますから。」
酒井:「私が思い浮かべるパン屋さんのクルマって、後部が高くなっているバンタイプで、後ろの扉がガバッと開いて、中から香りの良いパンが出てくる…そんなイメージなのですよ。あえて車種を挙げるとすると、ルノーのカングーの様な。」
黒野さん:「なるほど、ちょっと身構えてしまいましたが、案外オーソドックスなイメージで安心しました!笑。ちなみに、私のひとつ前の愛車はカングーですよ。更に、その前もカングーです!笑」
酒井:「えっ、そうなのですか!?黒野さんには、この後ご紹介頂く現在の愛車に大変魅力を感じてお声掛けさせて頂いたのですが、まさかカングーにもお乗りだったとは!それも2台続けて!?」
黒野さん:「ええ。1台目と2台目の2ショット写真がありますので、ご覧になりますか?年式は2台とも同じ2003年式だったのですが、右が1台目(1.4Lモデル)で、左が2台目(マイナーチェンジでフロントマスクなどが新デザインになった1.6Lモデル)です。」
酒井:「そうそう、これこれ!コレがまさに私がイメージするパン屋さんのクルマです!いやぁ、まさか初代カングーのマイチェン前後の2ショット写真にお目にかかれるとは思ってもいませんでしたよ。黒野さん、本日は有難うございました…って、まだ始まったばかりでしたね。ここで話を戻しまして、黒野さんのブーランジェ(パン職人)としてのお仕事のことについてお聞きしていきたいと思います。」
黒野さん:「…笑。」
酒井:「まずは、黒野さんが経営されているパン屋さん『ブーランジェリー・クロノ』について、お聞きしたいのですが、この『クロノ』というお店は、インターネット販売専門店なのでしょうか?」
黒野さん:「はい。主には『焼きたてパン(常温)』、『焼きたてパン(冷凍)』そして『冷凍パン生地』の3種類をネットショップとして販売させて頂いております。私は、焼きたてのパンの香りは一瞬にして人を笑顔にしてくれる魔法だと考えていて、私が作るクロノのパンはご家庭のトースターでもその魔法が有効なパンなのですよ。また、カフェやホテル、そして青果店などにも卸しておりますので、お近くの方であれば、こういった取扱店さんに足を運んで頂けると、クロノのパンに出会うことができます。」
酒井:「いや実は、私自身インターネットでパンを購入することに抵抗がありまして…正直なところ、パンはパン屋さんの店頭で買って食べた方が美味しいものだと思っていました。しかし、実際に通販でクロノのパンを購入して、届いたパンを自宅のトースター(超安物です!笑)で焼いてみたのですが、あら不思議!キッチンには焼きたてパンの香りが漂い、カリッ、フワッ、モチッと、焼きたてそのもののパンが焼き上がったのには驚きました。ブーランジェリー・クロノのウェブサイトを拝見しますと、取扱店さんも大変魅力的だったので、今度お伺いしようと思います。」
黒野さん:「クロノのパンをお召し上がり頂き有難うございます。クロノのパンは、『皆様においしいパンをお届けしたい』という想いからから試行錯誤した結果生まれたパンなので、おいしくお召し上がり頂いた様で、とても嬉しく思います。」
酒井:「ちなみに、企業秘密なのかもしれませんが、何か特別な作り方をされていらっしゃるのですか?」
黒野さん:「いえいえ、何も特別なことなんてありません。ただ、パン作りというのは、単純な材料で作るだけに色々な可能性がある反面、意外と難しいのですよ。だからこそ、粉、水、塩、糖、牛乳といった材料には徹底的に拘り、その中でも特に拘り、大切にしているのが酵母です。クロノのパンは、私が起こした『自然酵母』を使用して作っています。」
酒井:「『自然酵母』ですか?あまり馴染みのない言葉ですね…。パンを作るときには、酵母の力でパン生地が発酵して…膨らんで…イーストさんが…??」
黒野さん:「酒井さん、大丈夫ですか?頭から煙が出ていますよ!笑。ちなみに、広義に捉えるとイーストさんは酵母さんと同一人物ですよ♪笑」
酒井:「あの…お恥ずかしい話、そもそもパン作りにおける酵母の役割などについて、あまり理解していないのですが、簡単にご説明頂いても宜しいでしょうか?」
黒野さん:「畏まりました。パン作りに欠かせない酵母の役割は、酒井さんのご理解のとおり、パンを膨らませる(発酵させる)ことです。そして、この酵母にはいくつか種類があって、形態も粉状のドライタイプや液体状のものなど様々ですが、どれも元は様々な自然素材から作られていて、言わば『自然界からの贈り物』なのです。さらに、この酵母には主役と脇役がいるのですよ♪」
酒井:「そうなのですか!何だか面白そうな話になってきましたね。スーパーで売られている様なインスタントドライイーストも酵母の一種なのですよね??」
黒野さん:「ええ、インスタントドライイーストというのは、短時間で効率よくパン生地を発酵させることができる『主役』の菌を取り出して、培養、乾燥させたものです。それに対し、『脇役達』も含んだ様々な菌の全てを培養させた酵母というのは、ゆっくりと時間をかけてパン生地を発酵させます。この『脇役達』の効果によってパンに風味や旨味を与える事ができるのです。」
酒井:「なるほど。何事も効率だけを追求するのではなく、じっくりと時間をかけることも重要だということですね。」
黒野さん:「もちろん、インスタントドライイーストが悪いと言っている訳ではありませんよ。ご家庭でお子様とパン作りをするというのも、パンの楽しみ方のひとつですので、その様な場合には、インスタントドライイーストがベストチョイスといえます。」
写真:噛めば噛むほど味わいが出てくる、クロノのしみじみパン達
酒井:「ご説明有難うございました。ようやく私も酵母のことについて(多少ですが)理解したところで話を戻したいと思うのですが、クロノのパンに使われている『自然酵母』というのは、先ほどご説明頂いたような酵母とは種類の異なる酵母なのでしょうか?『天然酵母』と書かれて販売されているパンは見かけることはあるのですが、『自然酵母』という言葉は初めて聞いた気がします…。」
黒野さん:「確かに、自然培養された酵母は、ドライイーストなどの化学培養菌と区別して『天然酵母』と呼ばれることが多いですが、この『天然酵母』という言葉に明確な定義はありません。
クロノでは、新鮮で旬、そして安全な果物や野菜をジューサーミキサーにかけ、食材の持つパン酵母の素を1週間かけて自然な形で培養しています。季節によっても酵母の様子が違ってくるので、同じ食材でもそれぞれ個性が出てくるのですよ。そして私は、この個性溢れる酵母を『自然酵母』と呼んでいて、この『自然酵母』こそが、クロノのパンを美味しくしてくれる存在なのです。」
酒井:「培養に1週間ですか!!それでようやく酵母が出来る訳なので、そこから仕込みをして焼き上げて…という工程ですよね??」
黒野さん:「ええ、クロノで起こした『自然酵母』を使用し、私が1つ1つ丁寧にこねて作っておりますので、パンの仕込みから出来上がるまでは約18時間かかります。『天然酵母』のパンと聞くと、すっぱい!とかパサパサする!というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、私が皆様にお届けしているのは、自家製の『自然酵母』を使い、自然のままにゆっくり発酵させたパンです。『自然酵母』が生み出す独特のモチモチ感と噛めば噛むほど口の中に広がる深い味わいを、ぜひ皆様に感じて頂きたいですね。私は、手ごねのうまさに勝るパンは無いと考えていますから。」
酒井:「お話をお聞きするだけで、焼きたてパンの良い香りがする気がしますね!何だかお腹が空いてきました…笑。このインタビューの中だけでは、クロノの魅力を全てお伝えするのは難しく、今回はご紹介できませんでしたが、私個人的には、『オリーブオイル100%で作るスコーン』と『季節のジャム』もぜひ皆様にお試し頂きたいオススメの品ですので、詳しくはブーランジェリー・クロノのウェブサイトをチェックしてみて下さい。」
写真:外はカリカリ、内側はしっとり焼き上げられたクロノのスコーン