これまで3回に亘って「経費性の観点からみた法人化のメリット」について説明させて頂きましたが、自動車・バイク業界における法人化シリーズの第4回目となる今回は、「税金面からみた法人化のメリット」ということで、法人を設立することによって、税負担が減少し、節税に繋がる仕組をご紹介したいと思います。
役員報酬の設定がポイントとなります(給与所得控除と税率差)
法人には法人税等(各種地方税を含む)が、個人には所得税等(住民税を含む)が課税される訳ですが、節税を目的として法人化をする場合には、法人化した後に「法人に課税される税金」と「個人に課税される税金」の合計が、「これまで個人に課税されていた税金」より少なくなるような仕組作りが必要となります。
具体的には、役員報酬の金額をベストな状態に設定することによって、節税の仕組を作っていくことになります。
この流れを税法の規定に従ってご説明することもできるのですが、より分かり易く理解して頂くために、実際の事例に従って、ご紹介していくことにします。
ここでは、法人化することによって「これまでの個人事業としての儲け(=利益)は、一旦、法人の利益となり、その利益の中から、経営者が給与(=役員報酬)を受け取ることになる。」という流れだけイメージしておいて下さい。
自動車整備業を営むAさんの法人化物語
地域密着型の自動車整備工場を経営するAさんは、その真面目な仕事ぶりが評価され、順調に業績を伸ばし、年間売上3,000万円、部品仕入や工場の維持費などを差し引いても、1,500万円もの利益が残るまでになりました。
<個人事業主としてのAさんの税金計算>
・自動車整備業の儲け 1,500万円
・各種所得控除(*) 300万円
・差引課税対象金額 1,200万円
・所得税242万円+住民税120万円=362万円
(*)配偶者控除、扶養控除、社会保険料、生命保険料控除など。便宜上、その合計額が300万円として計算します。
う~ん、やっぱり税金の負担が重く圧し掛かってきますね…。
住民税は一律10%なのですが、所得税は累進課税といって、課税対象が大きければ大きい程、高い税率が適用される仕組になっていて、Aさんの場合、課税対象となる1,200万円のうち900万円を超えた部分については33%という所得税率が適用されている状況です。
住民税と合わせると、実に43%にもなり、これは何とかしないといけません。
祝!法人設立/株式会社Aモータース 代表取締役Aさん誕生
税負担を重く感じていたAさんは、税理士に相談して法人化を進めることにしました。
そして設立されたのが、「株式会社Aモータース」。そう、Aさんは、晴れて「代表取締役」となったのです。
そして、これまで1,500万円あった整備工場の儲けから、自分自身に840万円(月額70万円)の役員報酬を支払うことにしました。
<法人の代表取締役としてのAさんの税金計算>
・㈱Aモータースからの給与 840万円
・給与所得控除(*)204万円
・各種所得控除 300万円
・差引課税対象金額 336万円
・所得税24万円+住民税34万円=58万円
(*)Aさんの所得は、これまでの「事業所得」から「給与所得」に種類が変わります。そしてこの給与所得は、給与収入から給与所得控除というサラリーマン控除を差し引いて計算する仕組となっています。
<㈱Aモータースの税金計算>
・自動車整備業の儲け 1,500万円
・Aさんへの役員報酬 840万円
・差引課税対象金額 660万円
・法人税等(*)660万円×24%+7万円=165万円
(*)法人税等は、一定のルールに従って計算されるのですが、その計算方法はとても煩雑です。
ここでは、「課税対象金額が800万円以下の場合は、約24%の税率で課税される」ということと「利益とは関係なく、追加で7万円の均等割という税金が発生する」ということだけ、押さえておいて下さい。
法人化による単純節税額
改めて法人化する前と後で、Aさんの税負担を比較してみましょう。
法人化する前:362万円(個人分)
法人化した後:223万円(個人分58万円+法人分165万円)
実にその差139万円/年です。
10年で何と1,390万円!!ポルシェ911カレラが新車で買えてしまいますね♪
とまぁそんな妄想はさておき、何となく法人化による節税イメージを持って頂けましたでしょうか?
しかし、この節税額は「給与所得控除」と「税率差」という基本的な要素を適用しただけの金額ですので、実際には「所得分散」や「課税の繰り延べ」を取り入れつつ、前回までの記事でご案内した「経費性の観点から見たメリット」も加えますと…ワクワクしてきますね!笑
最後に
今回は、簡単な事例に基づく概算による税金計算を使って「税金面からみた法人化のメリット」についてご案内させて頂きましたが、法人化には、検討すべき要素が沢山あり、法人化によるメリットがあるか否かを適性に判定したうえで、その実行を判断する必要があります。
法人化についてお悩みの方やメリットがあるか検証してみたい方がいらっしゃいましたら、気軽にお問い合わせ下さい。もちろん、自動車関連業の方であれば相談無料で対応させて頂きます。
写真:ポルシェ911カレラ(ポルシェジャパン株式会社ホームページより)