色々と質問を頂くことが多い印紙税の罰則の話。
今さらながら、少し整理しておきたいと思います。
印紙税とは?
以下、国税庁の「印紙税の手引」より抜粋。
印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)などに課税される税金で、「印紙税額一覧表」に掲げられている20種類の文書が課税の対象となります。
課税される文書に係る納付すべき印紙税の額は、「印紙税額一覧表」に記載のとおり、その内容にかかわらず定額であるものや、契約書の内容や契約金額、受取金額などによって異なるものもあります。
国税庁ホームページにおいても印紙税に関する情報やタックスアンサー(よくある税の質問)を提供していますので、是非ご活用ください。
まぁ、「課税対象となる文書を作成したら印紙を貼ってね」ということですね。
印紙税に関する税理士の対応が悪い!?
世の中には税理士の悪口を言うのが好きな方が意外といらっしゃいますが、特にこの印紙税(収入印紙)に関する不平不満は多いようです。
税務調査で印紙税の追徴を受けたのに、顧問税理士の対応が悪い!
とか、
いくらの収入印紙を貼ったらいいか聞いても曖昧な回答しかよこさない!
とか。
実は、これには訳(わけ)があります。
この「訳」が「言い訳」なのかどうかは、皆さまがお決め下さい(笑)
私たち税理士の使命や職務などについて定めた「税理士法」においては、印紙税は税理士業務の対象税目とされていません。
少し難しい言い方をすると、印紙税については「税務代理人」になることはないのです。
つまり、印紙税に関する税務調査については、私たち税理士が代理することがないため、税務署とのやり取りは、原則として納税者の皆さまが行うことになります。
所得税や法人税、消費税などは税理士が「税務代理人」として税務署との対応を行うにも関わらず、印紙税の対応はしてくれない…
この税理士は、印紙税に詳しくないんだ…
『税理士の対応が悪い!』
となるのかもしれませんね。
また、作成した文書が印紙税の対象になるのか、対象になる場合はいくらの収入印紙を貼れば良いのか、できればチャチャっと答えて欲しいですねよ?
ただ実際のところは、
「〇〇証」だから印紙税の対象になる!
とか、
「〇〇契約書」だから収入印紙は200円!
といった単純な話ではなく、契約書を隅々まで確認して、記載内容や記載金額によって判断する必要があるのです。
先ほどの「印紙税の手引」には、このようにも書かれています。
課税文書に当たるかどうかのお尋ねのときは、最寄りの税務署に電話で事前に相談日時等を予約いただいた上で、その文書をご持参ください。
収入印紙をいくら貼ったらよいか知りたいときは、税理士ではなく税務署にお尋ねください。
税務調査で追徴を受けたら3倍取られる?
印紙税の3倍返し、有名な噂ですよね。
実際に、税務調査によって収入印紙の貼り忘れ(印紙税の納付もれ)が発覚した場合、原則として「貼り忘れた収入印紙の額」と「その2倍に相当する金額」の合計額が徴収されます。
もともと納付すべきだった印紙税の額を「1」とすると、「1+1×2=3」になるので、「3倍返し」という表現も間違いではありません。
ちなみに、追加される2倍の部分は「過怠税(かたいぜい)」と呼ばれ、いわゆる罰則(ペナルティ)のための税金です。
ただ、人間誰しも間違いはあるので、きちんと「ごめんなさい」することができれば、3倍返しが1.1倍返しまで軽減される救済措置があります。
ここでいう「ごめんなさい」は、自主的に不納付を申し出ることを言います。
以下、印紙税法第二十条(印紙納付に係る不納税額があつた場合の過怠税の徴収)の抜粋です。
第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同項の規定により納付すべき印紙税を当該課税文書の作成の時までに納付しなかつた場合には、当該印紙税の納税地の所轄税務署長は、当該課税文書の作成者から、当該納付しなかつた印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する。
2倍相当の過怠税が徴収される旨が書かれていますね。
2 前項に規定する課税文書の作成者から当該課税文書に係る印紙税の納税地の所轄税務署長に対し、政令で定めるところにより、当該課税文書について印紙税を納付していない旨の申出があり、かつ、その申出が印紙税についての調査があつたことにより当該申出に係る課税文書について国税通則法第三十二条第一項(賦課決定)の規定による前項の過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該課税文書に係る同項の過怠税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付しなかつた印紙税の額と当該印紙税の額に百分の十の割合を乗じて計算した金額との合計額に相当する金額とする。
一定の条件を満たせば、過怠税を100分の10、つまり0.1倍相当にしてくれる旨が書かれていますね。
ここでに書かれている、「過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは」の解釈は非常に難しいところなのですが…
私の経験上、悪質なケースでない限りは「1.1倍返し」で済んでいることが殆どです。
間違えたら「ごめんなさい」する!
そして、
次から気を付ける!
何事も基本的な考え方は同じですね。