前回の懸賞金に係る税金と一時所得【前編:競馬のハズレ馬券は経費?】では、ニュースで話題になった競馬に係る脱税事件のことを中心に書きましたが、今回は一時所得の基本的な考え方などについてご紹介したいと思います。
懸賞金に税金は課税される!!
最近、クイズ番組などを見ていると豪華な賞品や優勝賞金を獲得している方が沢山おられます。「賞品や賞金なんて芸能界だけの話」と思いがちですが、私たちの身の周りにも、インターネット懸賞や雑誌懸賞などがたくさんあり、意外と他人毎ではないように思えます。
実は、これらの懸賞金は一時所得(*)という扱いになり、所得税の課税対象となってしまいます。
(*)一時所得の計算方法
「総収入金額」から「収入を得るためにかかった額(必要経費)」と「特別控除額(最高50 万円)」を控除して計算した「一時所得の金額」をさらに2 分の1 にした金額に対して所得税が課税される仕組みとなっています。
そもそも一時所得って何??
「一時所得」とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。何だか分かり辛いですが、具体的には次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等
(3) 法人から贈与された金品
(4) 遺失物拾得者が受ける報労金等
具体的な計算例
10 万円の馬券を購入したところ見事的中し、10 倍の払戻金100 万円を受け取った場合の一時所得を計算してみたいと思います。
前述の計算方法に基づいて計算しますと…
(払戻金100万円-馬券10万円(*) - 50万円)= 40万円
が一時所得の金額となります。
さらにこの一時所得の金額40 万円を2 分の1 にした20 万円が、給与所得などの他の所得と合算されて所得税(総合課税)の対象となります。
(*)一時所得の必要経費
必要経費の計算については、「その収入を生じた行為や原因ごとに直接要した金額に基づいて計算」することになっています。よって、先日の脱税事件のニュースを見て「ハズレ馬券=経費」と勘違いされた方も多いかと思いますが、残念なことに、通常の娯楽目的の場合は、他レースのハズレ馬券の購入代金は必要経費とは認められません…。
ちなみに、競馬場への交通費や競馬新聞代や赤エンピツ代は必要経費とすることができますが、金額が僅少であるため、今回は除外して計算しております。
現金以外のものを受取った場合
現金以外の懸賞品等を受取った場合には、その賞品の分類毎にその総収入金額に計上すべき金額が定められています。
(1) 宝石、貴金属 … 時価
(2) 土地、建物 … 時価
(3) 商品券類 … 額面金額
(4) 自動車、家具 … 小売価額の60%相当額
もし懸賞に当たって、現金か賞品か選択できるようであれば、上記も考慮にいれて選択するのも良いかもしれませんね。
宝くじの特例
最近ではジャンボ宝くじだけでなく、LOTO(ロト)やナンバーズなど様々な宝くじがございますが、宝くじの法律である「当せん金付証票法」13 条によると、「当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない」とありますので、宝くじの当せん金に税金はかかりません!!ですので皆さん遠慮なく当てて頂いて構いませんよ(笑)
しかし注意して頂きたいのは、そのお金で住宅などを購入した場合には、税務署から購入資金の出所についてのお尋ねが届くことがあります。このとき、宝くじの当せん金であることを証明できないと、面倒なことになる可能性もありますので、「当せん証明書」を発行してもらっておきましょう。
申告しなかった場合
「黙っていてもわからないだろう…」と思ってごまかした場合、万が一見つかれば、所得税の過少申告、または無申告とみなされ、35~40%の重加算税、延滞税等が課せられることもあります。税金の対象になるか不安なものがある場合には、気軽にお問い合わせ下さい。