税金のルール(基準)は、意外と曖昧なものが多いって…
不確定概念
税金には様々なルールが存在しますが、その中には具体的な金額や割合などを基準として示していないものが多数存在します。
例えば金額の場合、
「○○円以内」
とう基準を明確に定めずに
「不相当に高額な」
とか
「社会通念上妥当な」
といった具合に、非常に曖昧なルールしか定められていないケースが多いのです。
これを私ども税理士の業界では
「不確定概念」
と呼んでいます。
はっきり言わない税理士
どのような専門家であっても、必ずクライアントから大小さまざま苦情を受けることがあります。
そんな中、私ども税理士に対する苦情として多く寄せられるのが、
「税理士が具体的なことをはっきり言わない」
という内容です。
これは言い訳になってしまいますが、そもそものルールが曖昧なのですから、仕方がないこととも言えます。
「著しく」
「不相当に」
「合理的な」
「社会通念上」
「時価」
「速やかに」
「遅滞なく」
「やむを得ない事情」
などなど、とにかく具体的な
「いくらまで」
「いつまで」
という答えの無いルールが存在するのです。
ケースバイケース
ではなぜ明確なルールを定めないのか、それはケースバイケースだからです。
例えば役員に支給する毎月の役員報酬の場合、税務上「不相当に高額な部分の金額」は損金算入が認められません。
しかし、いくら以上が「不相当に高額」なのかについては明確に規定されていません。
つまり、その会社の規模や収益の状況、その役員の職務内容、その会社の従業員への給与支給状況、その会社と類似する規模の同業他社の役員報酬の支給状況など、様々な要素を総合的に勘案したうえで「不相当に高額」か否かを判断する必要があるのです。
連載最後に伝えたいこと
2018年8月よりスタートした本連載企画も、今回で最終回となります。
全57回にわたって中古車販売業の実務に携わる方に向けて情報配信を続けてきましたが、最後に税務の大切な考え方をお伝えしたいと思います。
今回ご紹介したとおり、税務の世界には曖昧な表現でしか規定されていないルールが数多く存在します。
しかし、曖昧な中にも一定の判断基準が示されており、会社側には会社なりの主張が、税務署側には税務署なりの主張が存在します。
そして、税務調査において両者の主張が対立するケースは珍しくありません。
このような場合、どのような根拠に基づいてその金額を定めたのかなど、いかに合理的に説明できるかが非常に重要なポイントとなります。
日々の実務においては、常に根拠を示す習慣をつけ、胸を張って説明ができる処理を心掛けて頂きたいと思います。
改めまして、長きにわたりお付き合い頂きありがとうございました。
コラム説明
この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
自動車販売店の経営者や実務担当者が抱く経営・経理・税金に関する様々な疑問について、自動車業界専門の税理士が解説しておりますので、他のコラムをご覧になりたい方は、下記URLより一覧でご確認頂けます。
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