水戸京成百貨店による雇用調整助成金などの不正受給問題が世間を賑わしておりますが、従業員の勤務実績データを改ざんするよう指示したとされる総務部長さんは「前社長の指示があった」とも主張しているのだとか。
まぁ、私は「悪いことをしたらバチがあたる」と思って生きているので、他所様のことには何の興味もございません。
ただ、何か社内でゴチャゴチャしている話を聞くのは好きではありませんね。
以前に、こんな記事を書きました。
この記事の中で、
サラリーマン同士で仕事を押し付け合う
サラリーマンは会社の利益より社内での自分の評価を優先する
と書いたことに対して、「サラリーマンをディスっているのでは?」とのご意見もあるかもしれませんが、決してサラリーマンの方を批判している訳ではありません。
このようなサラリーマン的発想や行動によって会社組織における秩序が守られていたり、サラリーマン同士の競争意識が会社にとってプラスに作用することは多々あります。
しかし、サラリーマン同士で互いに足の引っ張り合いをしたり、社内での自分の評価を上げたいという想いが間違った方向に行ってしまい不正を働いてしまったりと、会社にとってはマイナスの要素が大きいのも事実です。
サラリーマン的発想や行動を「プラスに作用させること」と「マイナスにならないようにすること」、つまり人事マネジメントは経営者の重要な仕事の1つなのです。
そして、私ども税理士が直接関わる経理や会計のジャンルでも、このサラリーマン的発想や行動がネックになることがあります。
それが、記事タイトルにも記載した「部門別経理・内部売上(社内売上)」を採用しているケースです。
例えば、「中古車販売」と「自動車整備」の両方の事業を営む会社があったとしましょう。
販売部門と整備部門には、それぞれ役職者と従業員が配属されています。
経営者の立場からは、販売部門と整備部門の部門別損益を適正に把握したいので、部門別経理を導入しました。
部門別経理というのは、その名のとおり損益科目を部門別に入力する方法で、
・車両を販売した場合
車販売掛金 / 車両売上高(販売部門)
・整備代を請求した場合
整備売掛金 / 整備売上高(整備部門)
といった具合に、仕訳を行う際に該当する部門を選択することで、会計システムで「部門別損益計算書」を出力することが可能となります。
さらに、この部門別経理の延長線上には「内部売上(社内売上)」の計上があります。
外部との取引であれば、シンプルに部門別に入力すれば良いのですが、これだけでは販売部門と整備部門の損益を適正に反映させることができないのです。
例えばの例えば、販売部門が車両を販売した際に、「納車整備代」として55,000円を注文書に記載したとします。
整備業務を外注して33,000円が発生した場合における販売部門の損益は、
・整備売上高 55,000円
・外注委託費 33,000円 差引 22,000円
となります。
しかし、自社で整備を行った場合には、
・整備売上高 55,000円 差引 55,000円
となり、55,000円全額が販売部門の利益になってしまいます。
これでは、実際に作業を行った整備部門の役職者や従業員は面白くありません。
そこで、整備部門から販売部門に対して「内部売上(社内売上)」の計上を行うのです。
<販売部門>
・整備売上高 55,000円
・内部外注費 33,000円 差引 22,000円
<整備部門>
・内部整備代 33,000円 差引 33,000円
こうすることで、お客様から頂く55,000円の納車整備代を販売部門と整備部門で分け合うことができるのです。
めでたし、めでたし…
とはならないですよね。
このような部門別経理や内部売上を導入している会社の場合、役職者の評価や従業員の給与・ボーナスなどは部門別損益に基づいて行われるケースが殆どです。
先ほどの納車整備の例で見てみると、33,000円という内部売上の金額がより小さければ販売部門の損益が、より大きければ整備部門の損益が増える結果となるため、同じ会社であるにも関わらず、販売部門と整備部門に相反関係が生まれるのです。
また、売上だけでなく経費についても相反関係は生じます。
例えば、1つの敷地内で展示場と自社工場を併設している場合、そこの賃料(販管費:地代家賃)は、販売部門と整備部門でどのように分けるのが適正でしょうか?
どちらの部門も、経費負担は少ないに越したことはないため、ここでも相反関係が生じることになります。
販売部門と整備部門の競争意識が会社にとってプラスに作用するかもしれません。
販売部門と整備部門が足の引っ張り合いをしてしまい、会社全体の利益には繋がらないかもしれません。
自分の部門別損益を良くしたいがあまり、不正を働いてしまう役職者が現れるかもしれません。
言い出せばキリが無い話ですが、経営者はサラリーマンによるサラリーマン的発想や行動を理解しておくことが大切だと思います。
とまぁ…
偉そうなことを書いておりますが、私自身はと申しますと絶対にサラリーマンにはなれないタイプの社会不適合者です(笑)
さらに、全ての仕事を自分のレベルで行わないと気が済まないタイプなので、経営者としても中途半端(笑)
それでもやっぱり、私はサラリーマンより社長業の方をオススメします。