昨日、税理士試験受験生の皆様に向けて、試験科目の選び方をご紹介しました。
そして、その記事の中で
真の勉強は実務で行いますので、まずは1年でも早く試験に合格することを最優先にすべき!
とお伝えしました。
試験科目については、人それぞれ「合う、合わない」があるので一概には言えませんが、今回はボリュームが少ないことで知られている「国税徴収法」を試験科目としてチョイスすることの可否について現職税理士としての立場からご紹介します。
国税徴収法ってどんな税法?
少し前に山口県阿武町の4,630万円ご送金事件でも話題になった国税徴収法ですが、ざっくり言うと「国税の滞納処分その他の徴収に関する手続の執行について必要な事項を定めた法律」です。
私法秩序との調整を図りつつ、国民の納税義務の適正な実現を通じて国税収入を確保することを目的とした法律ではありますが、少し見かたを変えると、
国税と他の債権はどっちが優先されるか
税金を滞納したらどうなるか
といった論点であるため、勉強していると意外と面白い税法でもあります。
国税徴収法の試験内容は?
税理士試験における国税徴収法の最大の特徴は「理論のみ」という点です。
他の税法は「理論問題」と「計算問題」で構成されている中、国税徴収法だけは「理論問題で100点満点」の試験なのです。
(理論問題中で一定の計算を行うことはあります。)
国税徴収法は実務で役に立つ?
税理士試験において国税徴収法が敬遠される最大の理由は「実務で役に立たない」という噂があるからです。
結論から申し上げますと、国税徴収法の知識は実務で必要です!
法人税、所得税、相続税、消費税などの特定の税目を扱う科目ではありませんが、実務上はあらゆる場面において、この国税徴収法の知識は必要となります。
国税徴収法の学習時間は?
国税徴収法の標準学習時間は100時間から150時間と言われていますが、実際にはもう少し短くても合格レベルには達するボリューム感だと思います。
たからこそ受験生のレベルが比較的高く、本試験では横並びからのヨーイドン!になるため、他の受験生から一歩抜け出すためには、ある程度の努力と工夫が必要になります。
(これは一般論です。)
国税徴収法の合格率は?
過去の国税徴収法の合格率を調べてみました。
・令和3年 13.7%
・令和2年 12.2%
・令和元年 12.7%
・平成30年 10.7%
・平成29年 11.6%
・平成28年 11.6%
・平成27年 14.2%
・平成26年 13.2%
・平成25年 12.9%
・平成24年 13.6%
多少のバラつきはあるようですが、ざっと12~13%程度といったところでしょうか。
令和3年度の全科目の合格率は、
・簿記論 16.5%
・財務諸表論 23.9%
・所得税法 12.6%
・法人税法 12.8%
・相続税法 12.8%
・消費税法 11.9%
・酒税法 12.6%
・国税徴収法 13.7%
・住民税 12.7%
・事業税 12.6%
・固定資産税 13.8%
となっているので、税法科目の中では平均的な合格率と言えます。
国税徴収法の難易度は?
国税徴収法は、試験問題そのものの難易度は高くありません。
どちらかと言うとシンプルな出題内容になっているので、他の税法と比べて解答しやすいと思います。
つまり、出題内容に対し正確かつもれなく解答することが求められてしまうため…
本試験ではハイレベルな争いになるでしょう!
というのが、世間一般的に言われていることです。
しかし、実際のところは「学習ボリュームが少ない」という理由から「あまりレベルが高くない受験生」も集まりやすい科目とも言えるため、気負し過ぎずにリラックスして本試験に挑んだ方が良いと思います。
実際に私自身も、5月から国税徴収法の勉強を始めて、3ヶ月の勉強期間で一発合格しました。
これは決して自慢をしたい訳ではありません。
学習ボリュームが少ない=受験生のレベルが高い
という思い込みから、正確かつもれなく解答することを意識しすぎて「解答の主軸がブレてしまう」「解答範囲を広げすぎて時間が無くなってしまう」というミスを犯してしまうのです。
解答は論点を明確にしてコンパクトに!
この基本は、その科目の学習ボリュームに関係なく押さえておくようにしましょう。
国税徴収法の学習法
これは国税徴収法に限った話ではありませんが、税理士試験の理論学習は、
理解してから覚える!
覚えたらアウトプットの訓練をする!
この2つに尽きると思います。
また、改正項目が少ない税法でもあるので、試験科目を国税徴収法以外の科目に変更した場合でも、気軽な気持ちで受験を継続できる点も国税徴収法の魅力の1つです。
色々と噂が先行して試験科目として選択することに躊躇されている方や、せっかく頑張って勉強してきたのに、不合格が続いて試験科目を変更される方も多いと思いますが、少し肩の力を抜いて国税徴収法を受験してみるのも良いと思いますよ。