相続税とは、あえて財務省のHPの掲載されている表現で解説させて頂きますと…
相続税は、亡くなられた親などから、お金や土地などの財産を受け継いだ(相続した)場合に、その受け取った財産にかかります。
相続した財産の一部を国に納めていただき、広く社会のために使うことになるので、相続税には、資産を再分配する機能があります。
また、相続した財産が大きいほど相続税額は大きくなるので、生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、格差の固定化を防止する機能もあります。
相続税は、財産を相続した場合に必ずかかるわけではありません。
具体的には、相続した財産の額から、借金や葬式費用を差し引くなどした後の額が、一定の額(基礎控除額)を上回るときに、相続税がかかります。
ということだそうです…。
『資産の再分配』
『格差の固定化を防止』
公平なんだか不公平なんだか…
まぁ皆様それぞれに思うところはあるかと思いますが、今回はそんな相続税に関連し、亡くなった人(被相続人)が自動車(中古車)を所有していた場合のお話です。
相続税の計算において被相続人の財産を評価する際、自動車はどのように評価すれば良いのか、いわゆる自動車の相続税評価額の計算方法について解説していきたいと思います。
自動車の評価区分と評価方法
自動車は財産評価の区分では「一般動産」という扱いになります。
そして、それぞれの区分に応じた評価方法については、「財産評価基本通達」に示されています。
財産評価基本通達129 一般動産の評価
一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。
はい!意味不明ですね(笑)
なんで税法ってヤツは、こうも分かりづらく書かれているのでしょうかね…
この財産評価基本通達129をザックリまとめますと、
□原則は『売買実例価額』とか『精通者意見価格』などを参考にして評価する
□原則で評価できない場合は、同じような車種・グレードの新車価格から乗っていた期間の償却費を控除した額で評価する
ということが書かれています。
原則評価:売買実例価額等
それでは具体的な評価方法を見ていきましょう。
まず原則評価である『売買実例価額』『精通者意見価格』についてですが、通常は「市場価格」で評価されます。
しかし、過去に国税庁から公表された資料『「財産評価基本通達」(法令解釈通達)等の一部改正のあらまし(情報)』の注意書きとして次のような文言があります。
中古車等の一般動産の価額は、納税者等における把握が比較的容易である業者等への売却価額に相当する金額(売り急ぎ等の特殊な事情がある場合を除く。)により評価して差し支えない。
つまり、業者の買取価格相場で評価してOKということになります。
『車買取専門店〇〇!』
とか
『車売るなら〇〇~♪』
などで査定額を出してもらうだけなので超カンタンですね。
ただ、ネットで簡易査定をするだけだとメーカーオプションなどの加点評価や、キズ凹みなどの減点評価までは正確に反映されないので、やはり実際の査定額か、若しくは実際の売却額で評価するのが良いでしょう。
とここで、先ほどの国税庁が公表した資料を再度確認しておきます。
中古車等の一般動産の価額は、納税者等における把握が比較的容易である業者等への売却価額に相当する金額(売り急ぎ等の特殊な事情がある場合を除く。)により評価して差し支えない。
『売り急ぎ等の特殊な事情がある場合を除く』
と書かれていますね。
これは、身内に格安で譲ったような特殊な場合には、その売却額で評価することはできません!という意味です。
例外評価:償却費控除後の金額
税法には必ずと言ってよいほど「原則」と「例外」が規定されていて、自動車の評価についても「例外」は存在します。
例外評価が適用されるのは、先ほどの財産評価基本通達129に書かれている
『売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については~』
の場合です。
相続財産として相続する自動車を売る気がないのに、買取業者に査定してもらうのって嫌じゃないですか??
何かしつこく連絡されそうな気がするし…
ガンガン営業してきそうなきがするし…
まぁ、実際はキチンとルールやマナーを守って業務をされているお店が大半なのですが、一般ユーザーの目線からすると、やはり買取業者というのは気軽に利用し辛い存在であることは事実です。
そんな時は、この例外評価を採用しても問題ないと思います。
具体的には、
①同じような車種・グレードの新車価格
から
②乗っていた期間の償却費
を控除した金額で評価をします。
ここでポイントとなるのは、償却費の計算を行う際に「定額法」を使うのか「定率法」を使うのかという点です。
相続人の立場からは、相続財産としての自動車が低く評価された方が相続税の負担が少なくなり、そのためには控除する償却費の額は大きい方が有利です。
そして、償却費が大きく計算されるのは「定率法」の方なので、できればこの「定率法」で償却額を計算したいところです。
という訳で、「定率法」で償却してもOKであることを願いつつ財産評価基本通達の続きを見てみましょう。
財産評価基本通達130 償却費の額の計算
前項のただし書の償却費の額を計算する場合における耐用年数等については、次に掲げるところによる。
(1)耐用年数
耐用年数は、耐用年数省令に規定する耐用年数による。
(2)償却方法
償却方法は、定率法による。
耐用年数は「法定耐用」、償却方法は「定率法」でOKでした!
ちなみに、自動車の法定耐用年数と償却率は下記の通りです。
□普通自動車 6年(償却率0.333)
□軽自動車 4年(償却率0.500)
なお、中古で取得した自動車(中古車)に、さらに耐用年数が短くなります。
国税庁HPタックスアンサー
No.5404 中古資産の耐用年数【対象税目】
法人税
【概要】
中古資産を取得して事業の用に供した場合には、その資産の耐用年数は、法定耐用年数ではなく、その事業の用に供した時以後の使用可能期間として見積もられる年数によることができます。
ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額をいいます。)の50パーセントに相当する金額を超える場合には、耐用年数の見積りをすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。
また、使用可能期間の見積りが困難であるときは、次の簡便法により算定した年数によることができます。
ただし、その中古資産を事業の用に供するために支出した資本的支出の金額がその中古資産の取得価額の50パーセントに相当する金額を超える場合には、簡便法により使用可能期間を算出することはできません。
【計算方法・計算式】
(1) 法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
(2) 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数
なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
(注)中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるものですから、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできません。
【具体例】
法定耐用年数が30年で、経過年数が10年の中古資産の簡便法による見積耐用年数
(計算)
(1) 法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数
30年 - 10年 = 20年
(2) 経過年数10年の20パーセントに相当する年数
10年 × 20% = 2年
(3) 耐用年数
20年 + 2年 = 22年
【根拠法令等】
耐令3、耐通1-5-1~4
以上、今回は自動車の相続税評価額についてご紹介しました。