令和4年1月からスタートする電子取引制度は全ての事業者に影響があるって…
*補足*
この記事は、2021年12月8日付で「自動車流通新聞(グーネット自動車流通)」に入稿したもので、その翌々日に公表された「令和4年度 税制改正大綱」において、電子取引制度(電子保存の義務化・紙保存の廃止)の導入を2年間猶予する旨が盛り込まれました。
2年間の猶予規定に関しては、コチラの記事もあわせてご覧ください。
制度の概要
電子取引とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)の授受を電磁的方式により行う取引をいい、これまでは、受領した電子取引データを書面に出力して保存することも認められてきました。
しかし、令和4年1月1日以降に行う電子取引については、受領した電子取引データを書面により保存することが認められなくなります。
何だかよく分からないし、何となく他人事と思っている方も多いと思いますが、これは事業規模に関わらず全ての事業者が対象となるため、きちんと対応方針を決めておく必要があります。そこで今回は、この「電子取引制度」について、簡単に分かりやすくまとめたいと思います。
4つのポイント
内容をイメージし辛い「電子取引制度」という言葉ですが、ポイントとして、次の4つを押さえておけばOKです。
<ポイント①>
電子メールなどでデータとして受け取った請求書や、ネットからデータとしてダウンロードした領収書などは、紙で印刷して保存するのではなく、データのまま保存しなければならない。
<ポイント②>
保存するデータには、「改ざん防止のための措置(詳細は後述)」を講じる必要がある。
<ポイント③>
保存するデータには、「データ検索機能(詳細は後述)」を備えておく必要がある。
<ポイント④>
税務調査があった場合には、データをプリントアウトした「紙」を提出するのではなく、「データを提出」する。
電子取引とは
電子取引という言葉の意義については冒頭にも記載しましたが、簡単に言えば、「紙」ではなく「データ」でやり取りする全ての取引を言います。例えば「請求書や領収書を電子メールのPDF添付で受け取った」「ネットから領収書をダウンロードした」「電子請求書や電子領収書をクラウドサービスで受け取った」といった取引は、全て電子取引に該当します。
最近は、取引先から電子メールで請求書が送られてくるケースや、ネット通販で購入した商品の領収書を自分自身でダウンロードする仕組みになっているケースが多いので、無意識のうちに「電子取引」を行っていることになります。
データの保存要件
令和4年1月以降、データで受領した書類は、紙ではなくデータのまま保存しておく必要があることは前述のとおりですが、どのような形式でデータ保存しておけばよいのか確認していきます。
<保存要件①>
1つ目の要件は、下記A~Dの4つのうち、いずれか1つの措置を講じることです。
A.タイムスタンプが付された状態でデータを受領する
B.データを受け取ったら、速やかに自分でタイムスタンプを付す
C.データの訂正削除履歴が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用する
D.訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付ける
この1つ目の要件は、データ改ざんを防止するための措置を講じることを求めていて、そのうちDは、社内規程を作成し備え付けることで防止策とするものです。
規程様式が公表されているので、A~Cを読んで「意味が良く分からない」と思った方は、Dを選択することで、事務負担の増加を最小限に留めることができます。
<保存要件②>
2つ目の要件は、検索機能を確保することです。
具体的には「取引年月日」「取引先」「取引金額」の3つが検索できるようにしておく必要があり、何だか難しそうですが、これらの要素をファイル名に含めておくことで要件を満たすことができます。
例えば、2022年1月10日に●●部品㈱から5,500円の領収書がPDFで送られてきた場合、「2022.01.10●●部品㈱_5,500.pdf」というファイル名で保存することで検索機能を備えることができます。
また、保存するファイルを「月別」や「取引先別」にフォルダ整理することで、さらにファイル名への記載事項を減らすことも可能となります。
最後に
今回は、電子取引制度について、なるべく負担を減らして対応する方法を解説して参りましたが、もし所定の対応をしなかった場合であっても、電子取引制度に反して単に従来通りの紙保存を継続しているという理由だけで、青色申告が取り消されるといった罰則を受ける可能性は低いと思われます。
また、この原稿を書いている12月8日現在で、令和4年1月から開始予定の電子保存の義務化(紙保存の廃止)を2年猶予する旨の方針が打ち出されております。
猶予期間が設けられた場合、早期の対応を求められることはありませんが、あまり先送りすることなく、電子化の波に乗り遅れないようにしましょう。
コラム説明
この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
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