法定費用の経理処理には簡便的な方法も存在するって…
小規模店の実務事情
中古車販売店の経理実務において、その処理を煩雑にしている原因は、お客様負担の法定費用の存在に他なりません。中古車販売時や車検代行時には必ず発生するこの法定費用については、「預り金」や「立替金」という科目を使用して経理処理する方法が一般的なのですが、小規模店で経理担当者がおらず、代表者やその親族が経理を担当している店舗からは「もっと簡便的な経理方法は無いのか?」というご質問をいただく機会があります。
この「預り金」や「立替金」という勘定科目は、一連の取引が終了した時点でその残高は必ずゼロとなる訳ですが、経理実務においては、その消し込み処理や残高の検証作業に一定の手数を要しますので、小規模店に限らず、経理に時間を割くことのできない店舗では、負担に感じているケースが多いようです。
費用のマイナス処理
まず簡便的な方法の1つ目としてご紹介するのは、お客様から預かった法定費用を「費用のマイナス(貸方計上)」として処理する方法です。例えば、お客様負担の自賠責保険料を預かったとしましょう。本来であれば、「預り金」として処理し、これを保険会社に送金した際に同科目を取り崩す訳ですが、簡便的な方法として、預かった際も、送金した際も「保険料」という費用科目で処理します。お客様から預かった時点で「保険料」の残高が一時的にマイナス(貸方計上)となりますが、保険会社に送金した際に「保険料」のプラスが計上(借方計上)されるので、結果的に「保険料」の残高はゼロとなり、利益に与える影響はありません。
預かった金額を売上扱い
次に簡便的な方法の2つ目としてご紹介するのは、お客様から預かった法定費用を「売上扱い」する方法です。先ほどと同じ取引で、自賠責保険料を預かった際に「売上高」として処理します。保険会社への送金時は、先ほどと同様に「保険料」で処理することで、「売上高」と「保険料」が同額計上されるので、1つ目の「費用のマイナス処理」と同じく、利益に与える影響はありません。
簡便的処理の問題点
今回ご紹介した簡便的な方法は、「預り金」や「立替金」の残高管理を行わないことから、入出金や経理処理の検証性の低下は否めません。また、決算時に一定の調整処理が必要であり、消費税の取り扱いについても注意すべきポイントがあるため、その採用を検討する際には、必ず顧問税理士などに相談のうえ行うようにして下さい。
コラム説明
この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
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中古車販売店「経営実務」のウソ?ホント?
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