自動車業界の税務ポイント

第37回:コロナ禍には税務調査が来ないってウソ?ホント?


コロナ禍には税務調査が来ないって…

税務調査とは

税務調査とは、税務署などが納税者の税務申告が適正になされているか否かについてチェックし、誤りがあれば是正を求める一連の調査手続をいいます。
所得税や法人税、そして消費税といった税目は、事業者自らが所得や税額を計算し申告する「申告納税方式」が採用されているため、その内容に誤りが生じたり、故意に虚偽の申告をしたりすることにより、不当に納税を免れてしまう結果となることがあります。
このような誤った申告を防止し、申告内容の公平性と正確性を維持するために、税務調査が行われます。

準備調査と実地調査

一般的な税務調査は、「準備調査」と「実地調査」の2段階に分けられます。
準備調査段階では、納税者が提出した決算書や申告書の内容を分析し、調査対象となる納税者の問題点や、重点的に調査すべき項目を選定します。
そして、実地調査段階では、納税者の元を訪問し、準備調査であらかじめピックアップしておいた勘定科目を中心に、総勘定元帳などの帳簿書類と請求書や領収書といった根拠資料のチェックを行います。
実地調査を行うことによってこそ明らかになる事実もありますし、何より、実地調査にはその場ですぐに必要な資料を確認できるという優位性があります。

税務署のコロナ対策

税務署では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、職員一人ひとりが感染防止の3つの基本である
 ①身体的距離の確保
 ②マスクの着用
 ③手洗い
を徹底し、業務運営に当たっても「3密(密集、密接、密閉)」を避ける等の「新しい生活様式」に基づく各種の感染防止策を徹底しています。

<窓口業務>
□人との間隔を1~2m空け、会話の際、可能な限り真正面を避ける
□執務中のマスクの着用の徹底
□手洗い(手指消毒)の徹底
□毎朝の体温測定、咳・発熱等の有無の確認(発熱等の風邪症状のある者は、事務に従事しない)
□総合窓口周辺の窓や扉を開け、定期的に換気
□日々の窓口カウンター、面接ブースの消毒

<調査・徴収事務(出張前)>
以下の感染防止策を行い、管理者の確認を受ける
□検温の実施
□手洗い(手指消毒)の実施
□咳・発熱等の有無の再確認

<調査・徴収事務(出張先)>
納税者等の協力を得た上で、以下の感染防止策を行う
□マスクの着用の徹底(納税者等にも協力を依頼)
□応対時には、一定程度の距離を保ち、会話の際、可能な限り真正面を避ける
□窓や扉を開け、定期的に換気
□職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする

1回目の緊急事態宣言後

令和2年4月に緊急事態宣言が発動されて以降、新規の税務調査は行われていませんでしたが、中止されていた税務調査は令和2年10月から再開されています。
テレワークの導入により経理担当者が会社に通勤していない場合や、密の状態になることを懸念して会社側から実地調査は敬遠したいと申し出があった場合などには、書類の郵送や電話での質疑応答などで税務調査を進めることもあるようです。

税務調査新時代

新型コロナウイルスとの共存が求められる「ウィズ・コロナ」の環境下においては、これまでは当たり前のように密室で行われていた実地調査についても変化が求められます。
一定規模以上の大きな法人の場合、資料のボリュームそのものが膨大となるので、これらの資料を送付したりコピーを取ったりすることは現実的ではないため、今後も前述のようなコロナ対策を徹底したうえでの実地調査が必要となるでしょう。
一方、中小企業の税務調査については、準備調査の比率を高め、確認が必要と思われる項目について、総勘定元帳と根拠資料を税務署に送付する形態を採れば、税務署内で内容の確認は可能です。
情報セキュリティ上の問題もあるため、税務署がテレワーク・リモートワーク機器を導入することは難しいと思いますが、納税者側と税務署側が協力することで、双方にとって負担が少なく、かつ新型コロナウイルスの感染拡大防止が実現する税務調査の新形態を確立することは十分可能だと思います。

コラム説明

この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
自動車販売店の経営者や実務担当者が抱く経営・経理・税金に関する様々な疑問について、自動車業界専門の税理士が解説しておりますので、他のコラムをご覧になりたい方は、下記URLより一覧でご確認頂けます。

中古車販売店「経営実務」のウソ?ホント?
http://www.mn-tax.jp/garage/goonet


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