経営者は損益計算書だけチェックしておけばOKって…
重視すべき貸借対照表
中古車販売店の経営者の皆様にとって、最も関心のある項目は「お店の儲け」に他なりませんので、日ごろから「損益計算書」はチェックされていると思います。もちろん、お店の成績表ともいえる損益計算書はとても重要な書類ではありますが、経営者として最も重視すべき計算書類は、損益計算書ではなく「貸借対照表」であるという事実をご存知でしょうか?今回は、この貸借対照表の基本的な考え方などについてご紹介したいと思います。
貸借対照表の役割
貸借対照表は、ある一時点(主として決算時点)の財政状態を表す計算書類です。貸借対照表には、すべての資産と負債が表示されていて、現在の純資産の状態を確認することができます。また、未回収の販売代金がどれくらいあって、未払いの仕入代金や銀行からの借入金がどうなっているかといった残高情報を確認することができます。
在庫車両と社用車
中古車販売業における在庫車は「商品」として流動資産の部に表示されます。一方、代車や営業車に使用している社用車は「車両運搬具」として固定資産(有形固定資産)の部に表示されます。決算時点で保有する同じ車両であっても、その保有目的によって貸借対照表における表示は異なります。これはほんの一例ですが、貸借対照表という計算書類は各勘定科目を適正に分類して表示することで本来の役割を果たすことになりますので、まずは資産・負債それぞれの内容を見直し、貸借対照表を適性に作成することを心掛けて下さい。
貸借対照表に何をみる
貸借対照表には、必要資金をどのように調達し、それをどのように運用しているかといった内容が表現されています。こうした情報は、店舗展開や新規事業への参入などを検討する際に非常に有用な存在となります。つまり、貸借対照表とは、経営者として重要な経営判断を行う際に数字の裏付けを提供してくれる計算書類なのです。
どんぶり勘定の話
細かい収支計算や帳面への記入をせず、あるにまかせてお金をつかうことを「どんぶり勘定」といいますが、現代では「ザックリとアバウトにお金を計算すること」という意味合いで用いられています。因みに、ここでいう「どんぶり」は、天丼や牛丼をいれる器のことではなく、昔の職人さんなどが付けていた腹掛けの前部につけた大きな物入れのことです。当時の職人さんは、この「どんぶり(物入れ)」を財布代わりにして、無造作にお金を出し入れしていたことから、大雑把なお金の出し入れを「どんぶり勘定」と呼ぶようになったそうです。
現代の会計・税務の世界においては、こういった「どんぶり勘定」は好ましいものではありませんが、経営者という立場からは、この「どんぶり勘定」の感覚を持つことはとても重要です。細かい収支は損益計算書で確認しつつ、「どんぶり勘定」で貸借対照表に表示されている資産と負債を感覚的に捉えることができれば、きっとお店の経営に役立つことでしょう。
コラム説明
この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
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