消費税の簡易課税制度においては、その事業形態により、第一種から第六種までの6つの事業に区分し、それぞれの事業の課税売上高に対し、第一種事業については90%、第二種事業については80%、第三種事業については70%、第四種事業については60%、第五種事業については50%、第六種事業については40%のみなし仕入率を適用して仕入控除税額を計算する仕組みになっていますが、中古車販売の場合には、主に第一種事業、第二種事業または第三種事業に該当することになります。
第一種事業(卸売業)となる場合
第一種事業(卸売業)とは、他の者から購入した商品を〝その性質や形状を変えないで〟〝他の事業者に対して販売〟する事業をいいます。
その性質や形状を変えないで?
中古車販売における「性質や形状を変えない」場合とは、仕入れた車両を通常の点検整備や車内清掃・ワックスがけといった程度で販売する場合を言います。よって、板金塗装や部品交換を伴う整備などといった一定の加修をしてから販売する場合には、第一種事業ではなく、第三種事業に該当することになりますので注意が必要です。
(注)
この記事内では「その性質や形状を変えないで」の要件を満たすものとして解説しております。
他の事業者に対して販売?
店頭で一般の方に中古車を販売する行為は、卸売業ではなく小売業に該当するので、第一種事業ではなく、第二種事業となることはご理解頂けるかと思います。
それでは、中古車販売における「他の事業者に対して販売」とは、どのようなケースかと申しますと、真っ先に思い浮かぶのは、オートオークショへの出品や業販による販売ではないでしょうか?
これらは、間違いなく「他の事業者に対して販売」に該当しますので、第一種事業となります。
業務用小売の考え方
さて、ここからが今回の本題です。
中古車販売において、簡易課税のみなし仕入率が最も高い第一種事業(卸売業)に該当する販売は、オートオークショへの出品や業販による販売だけでしょうか?
答えは、NO!です。
実は、通常の店頭販売であっても、第二種事業(小売業)ではなく、第一種事業(卸売業)に該当する場合があります。
それは「業務用小売」です。
業務用小売とは、業務用に消費される商品の販売をいいます。
少し分かり辛いかと思いますので、国税庁のHPより引用して、卸売業とされる業務用小売の例示をご紹介します。
・プロパンガスの販売店が食堂や工場に対して行うプロパンガスの販売
・ガソリンスタンドが運送会社に対して行うトラック用燃料の販売
いかがでしょうか?
販売形態が同じでも、相手先が〝事業者〟であれば、第一種事業(卸売業)に該当するということがご理解頂けると思います。
私が、自身の出身地である大阪の税理士法人に勤めていた頃は、「主婦のおばちゃんにキャベツを売ったら小売業、お好み焼き屋のおばちゃんにキャベツを売ったら卸売業」といった説明を良くしておりましたが、関西方面の方は、こちらの方が分かり易いですよね(笑)
少し話が逸れてしまいましたが、中古車販売においても、たとえ店頭販売であっても、営業車や運送用車両などを事業者さんに販売した場合には、第一種事業(卸売業)に該当しますので、今一度、自店の処理を確認してみて下さい。
例えば、売上高が4,000万円の中古車販売店で、うち3割の1,200万円が業務用小売だった場合、業務用小売の事業区分処理を適正に行わなかっただけで、10万円近くも多く消費税を納付してしまう結果となるのです。
重要な注意点です
この業務用小売に対して第一種事業(卸売業)として90%のみなし仕入率を適用するためには、購入者が事業者であることが販売者の帳簿、書類等で明らかにされていなければなりませんので、帳簿の摘要欄には、販売先をキッチリと記帳(入力)して、注文書の控は必ず保存しておくようにしましょう。
以上、中車販売店における簡易課税制度の事業区分で頭を悩ませている方は、気軽に私たちにご相談下さい。