中古車販売店（中古車屋さん）が購入希望者を馴染みのお客様から紹介してもらったり、自動車整備工場が車検希望者を知人から紹介してもらったりということは、自動車業界では良くあることだと思います。
私が勤めていた中古車販売店でも「お友達紹介キャンペーン！！」と銘打って、様々な特典を用意しては販売促進活動に精を出したものです。
今回は実務上曖昧になりがちな、ご紹介者に対して「紹介料」を支払った場合の税務上の取扱いについて、記載したいと思います。
お客様を紹介してもらった時に支払う「紹介料」の取扱いについては、実は同じ「紹介料」という名目でも、支払う相手によってその処理方法が異なってきます。
情報提供や紹介を商売として行っている業者に支払った場合
自動車業界では、仲介業を専業としているケースは少ないですが、同業者間で紹介を受けた場合などには、文句なしで「支払手数料」や「支払紹介料」として費用処理（経費処理）が認めれれます。
友人や知人に支払った場合
特に何の取り決めもなく、「紹介してくれて有難う」という感覚で支払う紹介料は、いわゆる「お付き合いの一環」と考えられるため、原則として「接待交際費」となります。
接待交際費の税務上の取扱い
法人の場合
中小法人（資本金１億円以下の法人）については、これまでは支払った交際費のうち90％部分が税金を計算するうえでの費用（年間600万円が上限で、残りの10％は費用にできない）とされていましたが、平成25年度税制改正により、800万円以下の交際費全額が税金を計算するうえでの費用として認められることとなりました。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、法人のように「税金を計算するうえでの費用となる上限」は設けられていませんので、事業に関連する接待交際費であれば、全額が費用となります。しかし、接待交際費については、税務調査等において、税務署の目が厳しくなることは確かなので、領収書や相手先などの記録はきちんと残しておく必要があります。
税務署に睨まれないために
前述のとおり、法人であっても個人事業主であっても接待交際費として取り扱われることによる税務上のデメリットは殆どございません。（大会社を除く）
しかし、接待交際費というものは、事業関連性や金額の妥当性という観点から税務調査において必ずといっていいほど論点となるポイントなのです。
そこで、税務調査において税務署に睨まれない方法（「接待交際費」ではなく、「支払手数料」などの科目で処理する為の方法）を皆様に伝授したいと思います。
ポイント１：紹介料を支払うことを予め約束（契約）しておく
契約という言葉を使うと、何だか大変なイメージを持ってしまいますが、堅苦しい契約書でなくても、簡単な「確認書」に署名をして頂くだけで十分です。なお、確認書の雛形などについては、個別にお問い合わせ頂ければ、皆様のお店や工場の実態に合わせて、私たちが作成します。
ポイント２：紹介料の支給金額の基準を予め定めておく
仮に皆様が税務調査官だったとします。税務調査で会社の帳簿をチェックしていたところ、Ａさんには紹介料として１万円が、Ｂさんには10万円が支払われていました。「どうしてＢさんの方が高額なのだろう？怪しいな…」と思いませんか。
このケースでは、Ｂさんの方が高額であることが問題なのではなく、ＡさんＢさんともに、所定の基準に応じて支払われているかが重要なポイントとなります。
例えば、「紹介１件につき１万円」という基準を定めたにも関わらず、Ｂさんにだけ10万円を支払っている場合には問題ですが、「成約金額の１％」という基準を定めていて、Ａさんが紹介してくれたお客様が100万円の中古車を成約して、Ｂさんが紹介してくれたお客様が1,000万円の中古車を成約した場合には、Ａさん1万円、Ｂさん10万円という金額は適正なものとなり訳です。
節税と税務調査への対策は、「事前準備」と「いかに説明するか」がポイントとなりますので、皆様もぜひ参考にしてみて下さい。
