前回、「法人化(法人成り)は、合同会社ではなく株式会社で!【自動車・バイク業界と会社設立】」という記事を書きましたところ、「法人化による節税メリット」や「法人化によるデメリット」についても、詳しく説明して欲しい!というご意見を頂きましたので、自動車・バイク業界における法人化(法人成り・法人設立)のメリットやデメリットを何回かに分けてご紹介したいと思います。
どうして法人の方が経費の範囲が広いのか
法人にすると「何でも経費にできる」と間違った解釈をされる方も多いのが現状ですが、きちんとルールを守っていれば、個人事業主よりも経費の範囲が大きくなることは事実です。
第1回目である今回は、「個人事業主と法人の経費の範囲」について、その基本的な考え方をご紹介したいと思います。
1.個人事業主の「必要経費」と法人の「損金」
個人事業主が利益を得るために使ったお金は「必要経費」と呼ぶのに対して、法人が利益を得るために使ったお金を、会計上は「経費」と呼び、その中でも、法人税を計算する際に差し引くことのできる経費を法人税法上は「損金(そんきん)」といいます。
利益を得るため必要だったコストですから、個人でも法人でも、税金を計算するときに差し引きすることができることに違いはないのですが、個人と法人の「経済活動(活動目的)」の観点から見た場合に、この税金を計算するときに差し引きすることができる経費の範囲に大きな違いがあるのです。
2.法人の活動目的
法人は、「常に株主のために利益を得ることを目的」として活動しており、「それ以外の活動は一切していない!」という存在として扱うことになっています。
そのため、法人が行う活動に伴う経費は、原則として、すべて事業活動のために支出されことになるので、経費の範囲が広くなります。
3.個人の活動目的
一方、個人はと申しますと、洋服を買ったり、友人と遊びに行ったり、家族と旅行に行ったりと、プライベートな家事関連費と事業活動としての経費とが混在することになります。
個人事業主が所得税を計算する際には、さまざまな個人の支出の中から事業活動としての経費だけを選んで、「必要経費」を集計する必要がありますので、法人と比較すると経費の範囲が狭くなるのです。
自動車・バイク業界における税務調査のお話
中古車屋さん、自動車・バイク整備工場さん、板金塗装屋さん等を個人で営んでいる方に税務調査が入った際によくあるお話をひとつご紹介します。
前述のとおり、個人事業主は、プライベートな家事関連費と事業活動としての経費とが混在している訳ですが、水道光熱費、通信費、ガソリン代といった経費は、家事関連費分と事業活動分を明確に分けることは困難であることが多いと思います。
そういった場合には、「全体の支出のうち、30%くらいは家事関連費だから、その部分は経費に算入しない」という方法を選択することになる訳ですが、この区分計算が適当で、合理的な根拠がないと、税務調査で否認されてしまうのです。
税務調査では、例えば同じ30%だったとしても、適当に決めた30%と合理的な根拠(床面積や使用日数など)に基づいた30%では全く違った扱いを受けますので、注意が必要です。
以上、何となく法人の方が経費の範囲が広い理由がお分かり頂けたでしょうか?
次回以降では、「法人特有の経費」を具体的にご紹介して参りますので、お楽しみに。