自動車業界の税務ポイント

[総まとめ]車屋さん(中古車販売店・自動車整備工場)における経理処理ポイント


今から約8年前、自動車業界における経理処理のポイントについて【前編】と【後編】に分けてご紹介させて頂いたのですが…

8年前の自分よ、ちょっと読み辛いぞ(笑)

という訳で、ここで改めて車屋さんの経理処理について、そのポイントを簡単にご紹介したいと思います。

経理処理の目的

適正な経理処理って何だろう?

と考えたとき、まずは経理処理を行う目的を明らかにすることが大切です。

あくまでも中小事業者であることが前提となりますが、(適正な)経理処理を行う目的は次の2つです。

1.自社の経営状況を適切に把握するため

何を把握したいのかは店舗や工場ごとに様々なので、一概にコレが良い!という話はできませんが、最も重要なのは経営陣と経理スタッフの意思疎通だと思います。

ここのコミュニケーションが上手くいってないケースは非常に多く、私たち税理士が間に入って対処することもしばしば。

いずれにしても、経営者と経理スタッフは互いの仕事を理解し、信頼関係を築くべきだと私は考えます。

2.適正な税務申告を行うため

法人税や所得税は「利益(儲け)」に対して課税される税金です。

つまり、法人税や所得税を適正に計算する為には、この「利益(儲け)」が正しく計算されている必要がある訳です。

皆様の悩みの種でもある「法定費用」に係る経理処理について、簡単な例示を使って考えてみましょう。

車検整備の依頼があったトシマ自動車は、お客様から自動車重量税などの「法定費用5万円」と「車検整備代(代行料含む)10万円」の合計額15万円を受け取りました。

もちろん、法定費用については、お客様に代わって支払っています。

この場合に考えられる経理処理の方法としては…

パターン1:立替金経理(預り金経理)

まず、お客様に代わって支払った5万円の法定費用については、あくまでもお客様が負担すべきものなので「立替金」として経理処理します。

そして、お客様から総額15万円を受け取った際には、5万円分は「立替金」の回収として10万円分を「整備売上高」として経理処理します。

その結果、立替金はプラスマイナスでゼロとなり、トシマ自動車の「利益(儲け)」は10万円となります。

なお、先にお客様から法定費用を受け取った場合には、「車検預り金」として経理処理をして、お客様に代わって法定費用を支払った際に「車検預り金」の支払として経理処理を行うこととなります。

パターン2:両建て経理

まず、お客様に代わって支払った5万円の法定費用については、自社利用の車に係る法定費用と同じ様に「登録諸費」として経理処理します。

そして、お客様から15万円を受け取った際には、その全額を「整備売上高」として経理処理します。

その結果、トシマ自動車の「利益(儲け)」は15万円の「整備売上高」から5万円の「登録諸費」を差し引くことにより10万円となります。

結果は同じ

ご覧頂いた様に、パターン1でもパターン2でも最終的な「利益(儲け)」は同じ10万円になるので、どちらの経理処理の方法を採用したとしても、トシマ自動車の税金は適正に計算されます。

もちろん、パターン1の経理処理の方が望ましい訳ですが、難しく考えすぎて誤った経理処理を行うよりは、皆様が分かりやすい無理のない方法で経理処理を行った方が「適正な税務申告を行うこと」という目的を達成することに繋がります。

失礼な表現かもしれませんが、私たちは、お客様の経理レベルに合わせた無理のない経理処理方法をご案内しておりますので、日々の経理処理について、少しでも不安に思うところがあれば、気軽にご相談下さい。

話を戻しまして、要はこの「経営状況の把握」と「適正な税務申告」という2つの目的を達成すれば良いだけなので、難しいことは考えなくて大丈夫です。

しかし、「適正な税務申告」を行うべき税目の中には「利益(儲け)」に対して課税される所得税や法人税だけでなく「消費税」という税金も存在し、実は先ほどのパターン2の経理処理では「消費税」が正しく計算されないのです。

そこで「消費税の適正な税務申告」も実現可能なパターン3をご紹介します。

パターン3:経費貸方計上経理

まず、お客様に代わって支払った5万円の法定費用については、パターン2と同様に自社利用の車に係る法定費用と同じ様に「登録諸費」として経理処理します。

そして、お客様から15万円を受け取った際には、5万円分は「登録諸費」を貸方に、10万円分を「整備売上高」として経理処理します。

その結果、登録諸費はプラスマイナスでゼロとなり、トシマ自動車の「利益(儲け)」は10万円となります。

消費税等の課税判定

自動車業界における経理処理を行ううえでは、常にその取引内容が「消費税の対象となるか否か」意識することが重要となります。

とは申しましても、そう難しく考える必要もなく、皆様が「これは消費税がかかっているな」とか「これは消費税がかかっていないな」と感覚的に判断された結果が概ね正解になる様になっておりますので、ご安心下さい。

消費税の対象となる取引の例示

・車両本体や部品の売上げ
・整備代の売上げ
・車検代行手数料
・登録代行手数料
・車検整備代
・納車準備費用
・車庫証明申請手数料
・部品やオイル類の仕入れ
・板金業者等への外注費 などなど

消費税の対象とならない取引の例示

・税金(自動車税、重量税、取得税など)
・保険料(自賠責保険料、任意保険料など)
・リサイクル預託金
・登録に係る印紙代  などなど

相当額にご注意を

ここまでご覧頂いて「消費税って意外と簡単だな!」と感じた方も多いと思いますが、実は、消費税は数ある税金の中でも比較的シンプルで身近に感じられる税金といえるのです。

しかし、そんな中でも1つだけ注意して頂きたい項目があります。

それが「相当額」という考え方です。

中古車を販売する際にお客様から受け取る未経過分の「自動車税相当額」や「未経過分の自賠責保険料相当額」は一見すると消費税の対象とならない税金や保険料と判断してしまいがちですが、これらはあくまでも「相当額」であって、その実態は車両代金と同様となりますので、「売上代金の一部」として経理処理して、消費税の対象とする必要があります。

はい、意味不明ですよね。

この赤字部分を読んでイマイチ良く分からなかった方は、「相当額」の論点は無視して良いと思います。

テストで言うところの「捨て問題」ってヤツです。

もちろん、100点満点の経理処理が理想ですが、消費税の論点については、実務上の手数と天秤にかけつつ85点~95点くらいを目指すと良いでしょう。

以上、車屋さんの経理処理のポイントについて、何となくでもご参考頂けますと幸甚です。


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