安定的に利益が出るようになったら真っ先に「経営セーフティ共済」に加入すべきって…
節税×資金準備
開業当初は色々と苦労も多い中古車販売店ですが、経営が軌道に乗ってある程度安定的に利益が出るようになったら、「節税も兼ねた退職金原資などの資金準備」に目を向けると良いでしょう。
そして、数ある節税対策・資金準備方法の中から、中古車販売店が真っ先に行うべきは「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」への加入です。
既に加入済みの方も数多くいらっしゃると思いますが、今回はこの経営セーフティ共済の活用について、注意すべきポイントを含めてご紹介したいと思います。
経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済とは、取引先の予期せぬ倒産による連鎖倒産から中小企業を守ることを目的として、取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等の回収が困難となった場合に、共済金の貸付けを受けることができる制度です。
もちろん制度そのものも素晴らしいのですが、この経営セーフティ共済は「節税対策」の観点からも非常に魅力的な制度となっています。
3つの魅力
①全額損金
経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円~20万円の範囲から5,000円単位で選択し、掛金総額が800万円に達するまで積み立てることができるのですが、その掛金は、個人であれば必要経費に、法人であれば損金の額にそれぞれ算入されます。
つまり、積立金としての要素がありながら、その経費性が100%という訳です。
②金額変更可能
経営セーフティ共済の掛金は、途中で増額や減額の金額変更をすることができますので、「払えなくなったら困るから…」と加入を躊躇する必要はありません。
もし、当初設定した金額を払い続けることが困難になった場合には、最低掛金である月額5,000円に変更して加入を継続したうえで、業績回復に合わせて再び増額すれば良いのです。
③返戻率100%
経営セーフティ共済を解約すれば解約手当金を受取ることができるのですが、加入期間が「40か月以上」の場合には、掛金累計と同額が戻ってきます。
生命保険を活用した節税対策の場合には、これだけの短期間で返戻率100%を実現することは不可能なので、この経営セーフティ共済は、生命保険より優先的に活用することをオススメします。
解約時期を工夫
経営セーフティ共済を解約した場合の解約手当金は、税法上、個人であれば事業所得の収入金額に、法人であれば益金の額にそれぞれ算入されます。
つまり、何も考えずに解約してしまうと、これまで掛金が100%経費扱いになることによって節税になっていた分が、解約手当金に対する課税によってチャラになってしまうどころか、一時的に課税されることによって、高い税率が適用され、節税になっていた分以上に税金を納める必要が生じてしまいます。
そういった事態とならないよう、工場の修繕、役員の退職金または自然災害による損失発生など、解約手当金の「益」と相殺可能な「損」が発生するタイミングで経営セーフティ共済を解約するようにしましょう。
また、「損」が発生する局面では、資金的にも苦しくなってしまうことが多いので、資金面からも解約手当金は有用な存在となるでしょう。
掛金の前納制度
経営セーフティ共済の掛金は、月払いが原則ですが、「前納」という制度があり、積立限度額(800万円)の範囲内であれば、「前払い」で納めることができます。掛金を納付する月は前納期間には含まれませんので、加入申込時に掛金月額を10万円に設定した場合には最大79ヶ月分まで、20万円に設定した場合は39ヶ月分まで掛金を前納することができます。
前納制度と節税
中古車販売店の場合、年度の初めから利益が出ることが分かっているケースは殆どありませんので、実務上は、決算期や年末間近になって予想以上に利益が出ていることが判明し、慌てて節税対策を考えるケースが圧倒的に多いでしょう。
そんなときにこそ活用して頂きたいのが、前述の前納制度です。
通常、前納した保険料や掛金などは、原則として「前払費用」として処理されるため、その年度の対応月分しか経費にはなりません。
しかし、経営セーフティ共済の掛金は「前納の期間が1年以内である場合には、支払ったときに経費になる」と規定されているので、節税対策として経営セーフティ共済を活用する場合は、年末または決算月に向こう1年分を前納するのが効果的であるといえます。
前納の注意点
経営セーフティ共済の掛金支払方法は、一旦「前納」を採用したとしても、前納期間が終了した際には自動的に「月払い」に戻ってしまいますので、前納を継続して行う場合には、その都度「前納申出書」を提出する必要があります。
なお、前納申出書は、払込みを希望する月の5日(土曜・日曜・祝日の場合は翌営業日)までに受理される必要がありますので、余裕をもって登録取扱機関に提出するようにしましょう。
節税はバランス
今回は経営セーフティ共済について、制度の概要と節税対策の仕組みについてご説明させて頂きましたが、積立限度額が800万円という点から見ても、この経営セーフティ共済だけで節税対策が完結するということはありません。
また、短期間で返戻率が100%に達するという点では生命保険に勝りますが、「保障」が必要な場合には生命保険の導入も併せて検討すべきです。
節税対策というものは、自動車のカスタムやチューニングと同様に、自店にあったものをバランス良く組み合わせ、状況に応じてメンテナンスすることで最大の効果を発揮しますので、ぜひ専門家によるトータルアドバイスの下で、健全で適切な節税対策を行うようにして下さい。
コラム説明
この記事は、自動車流通新聞(グーネット自動車流通)さんで連載しているコラムの内容を転載したものです。
自動車販売店の経営者や実務担当者が抱く経営・経理・税金に関する様々な疑問について、自動車業界専門の税理士が解説しておりますので、他のコラムをご覧になりたい方は、下記URLより一覧でご確認頂けます。
中古車販売店「経営実務」のウソ?ホント?
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